私たちの頭にも、同じものがあるのか

今回の研究により、マウスの頭蓋骨は単に脳を収める硬いケースではなく、脳の異変をいち早く受け取り、それに応じる即応部隊を自前で育てる場所であることが明らかになりました。
もちろん、それがそのまま人間に当てはまるとは限りません。
ただし手がかりはあります。
研究チームは過去に採取されたヒトの頭蓋骨骨髄の遺伝子データを調べ直し、同じ顔ぶれの免疫細胞がいる痕跡を見つけています。
数は多くないものの、私たちの頭の中にも似た拠点が備わっている可能性を示す手がかりです。
さらに別の研究では、脳腫瘍を患う人の頭蓋骨の骨髄から、腫瘍を攻撃する力を持つ免疫細胞が見つかっており、それらには腫瘍の内部で戦っていた細胞と、同じ敵を見分ける目印を共有していました。
もし人間にも同じような養成所が備わっているなら、その意味は小さくありません。
頭皮の下にゲルを届けるという入り口は、頭蓋骨を開けて腫瘍に到達する手術とは比べものにならないほど負担が軽く、しかも全身の免疫をかき乱さずに脳の守りだけを強められる可能性があるからです。
研究を率いたワシントン大学のジョナサン・キプニス氏は「脳が防御のために頭蓋骨周辺の初期対応細胞に依存していることが分かったことで、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、長期COVID-19など、免疫学的要素を持つ多くの神経疾患の治療法開発に対する考え方が変わる可能性があります」と述べています。
頭蓋骨の中の免疫拠点を狙って操れる薬が生まれれば、脳腫瘍をはじめ、免疫が関わる脳の病気への向き合い方は、大きく変わるかもしれません。

































