たった1度の点滴で骨折は94%減少、骨強度も増加

その答えを確かめる相手となったのは、スペインに住む10人の女性でした。
年齢は51歳から72歳で全員が5年以内に骨粗鬆症による骨折を経験していて、8人は背骨が潰れていました。
試験においてはまず、全身麻酔をかけて骨盤の骨(腸骨)から骨髄を60ミリリットルほど採り、幹細胞だけを取り出して培養で増やしました。
そして1時間の処理で名札をつけ、腕の静脈から点滴で本人に戻します。
点滴は一度きりです。
その後、参加者は2年のあいだに11回の診察を受け、この処置の安全性を確かめ在られました。
結果、点滴にかんする副作用はゼロであることが判明します。
予想外だったのは、あわせて記録していた骨折のほうでした。
点滴前の2年間、10人合わせて1年に8件起きていた骨折が、点滴後の2年間は1年に0.5件まで減っていたのです。実に94%の減少でした。
骨そのものも変わっていました。
点滴から4か月後に骨を少し採って調べると、切り出した断面に占める骨の面積(骨組織面積、BTA)が、平均でおよそ1.7倍に増えていました。
2年後には、骨の内側にあるスポンジ状の部分(海綿骨)の状態を表す点数も、2割以上上がっていました(QTSスコア)。
血液の検査も、同じ方向を指していました。
骨を新しく作っているときに血液へ出てくる物質(P1NP)が、点滴のあとに増えていたのです。
しかも、骨を壊す働きを強く抑える薬(デノスマブ)を使っている人でも増えていました。
骨を作る薬でも同じ物質は増えますが、投与をやめればすぐに止まります。
ところが今回は、1回の点滴のあと、6か月を超えて増えたままでした。
研究者たちがこの治療を「生きた薬」と呼ぶのは、この長さのためです。
参加者が訴える痛みも、2週間後には平均35%、2年後でも34%軽くなっていました。
もっとも今回の研究は、安全性を確かめるための第1相試験のものであり、骨折の発生率、骨の量、海綿骨の点数、骨を作る物質の値は、いずれも副次評価項目となっています。
それでも、骨折を減らせるかどうかは、新しい骨粗鬆症の薬が認められるときに最も重く見られる指標です。
年配で、しかも骨粗鬆症になった骨から採った幹細胞が、まだ骨を作り直す力を残していたという点が人間で示された意味は、小さくありません。
研究チームは次に、スペイン以外にも参加者を広げる考えで、効き目を確かめるには複数の病院での大規模な試験が要るとしています。
著者らは「精密な糖鎖編集によって、間葉系幹細胞を使った治療が骨粗鬆症を改善する効果を発揮し、この病気の治療戦略を薬物療法から再生医療へと転換させる可能性がある」と述べています。

























