二酸化炭素がほとんど無い水で、微生物はどうやって増えた?

研究チームはまず、エンケラドスの海の小さな模型を実験室で作りました。
水に塩と炭酸塩を混ぜ、粉にした岩を加えたのです。
これで、海の強いアルカリ性だけでなく、水と海底の岩のあいだで起きる大事な反応まで再現しました。
岩と水の反応は活発で、水素がどんどん生まれ始めました。
エンケラドスの海でも起きているとみられる反応です。
この水に入れたのが、沖縄トラフの熱水噴出孔の近くで見つかったメタン菌「メタノサーモコッカス・オキナウェンシス」です。
作った海は、水に溶けた炭素は多いのに、二酸化炭素はとても少ない状態でした。
その中で、微生物は増えていきました。
理由を探るため、研究チームは増えている細胞の中で、どの遺伝子がよく働いているかを調べました。
すると、二酸化炭素を取り込んで体の材料に変える仕組み(還元的アセチルCoA経路)を、とても強く働かせていたことが分かりました。
この仕組みを強めたことで、ごくわずかしかない二酸化炭素を効率よくかき集められたのです。
網の目を細かくして、数の少ない魚も逃さずすくい上げるようなものです。
もう1つ分かったのは、菌が生きる力の出どころです。
二酸化炭素を体に取り込む働きも、生きるためのエネルギーを得る働きも、支えていたのはすべて、作った海で岩と水から生まれた水素でした。
この水素は生き物の手を借りずにできたものなので、実験の中では、岩と水の反応がこの微生物の暮らしを丸ごと支えていたことになります。


























