氷の衛星エンケラドスの海に「足りないもの」

土星は太陽系でいちばん多くの衛星を持つ惑星で、知られているだけで300個近くあります。
エンケラドスはそのうちの1つで、氷に覆われた小さな天体です。
200年以上ものあいだ、とくに目立つ衛星ではありませんでした。
見方が変わったのは、探査機が土星までたどり着いてからです。
2000年代から、NASAの探査機カッシーニや、最近ではジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、エンケラドスから水蒸気と氷の粒が巨大な噴煙となって吹き出す様子をとらえてきました。
凍った表面の下に、大きな塩水の海が広がっている証拠も見つかっています。
海底には熱水噴出孔(海底の温泉。熱くてミネラルの多い水を出す場所)が点々とあり、周りの水を温めていると考えられています。
化学の手がかりからは、この海が強いアルカリ性で、岩と水の反応によって水素が生まれていることもうかがえます。
水素と二酸化炭素がそろえば、エネルギーの面では、メタン菌が生きるための反応が進みやすい条件になります。
ところが、ここに1つ心配な点がありました。
こうしたアルカリ性の海では、メタン菌が体を作る材料にする二酸化炭素がとても少ないのです。
二酸化炭素が足りないと、メタン菌が自分の体を作れなくなるのかどうかは、分かっていませんでした。
オルシ教授も、この微生物が生きられるかを試すのは「望みの薄い賭けだった」と話しています。
では、二酸化炭素がほとんど無い水の中で、微生物はどうやって暮らしを立てたのでしょうか。


























