約2000頭のウシで確かめた「お尻の目」の実力

実は、この「お尻の目」の効き目は、科学的にも調べられています。
野生動物の生態学者キャメロン・ラドフォード氏らは、家畜に描いた目でライオンのような待ち伏せ型の捕食者を遠ざけられるかを確かめようとしました。
舞台は、最近になって家畜が襲われる被害が多く報告されていたボツワナで、およそ2000頭のウシが調査の対象になりました。
その結果、お尻に人工の目を描いた683頭のウシのうち、ライオンやヒョウに殺されたものは1頭もいませんでした。
一方で、何も描かなかった835頭のうち15頭は、この2種のどちらかに殺されていました。
お尻に単純な「×」印を描いたウシでも、4頭がこの2種に殺されています。
ただし、ブチハイエナだけは話が別でした。
ブチハイエナは調査の期間中、目を描いたウシ、何も描かないウシ、×印のウシから、それぞれ1頭ずつを殺していたのです。
このことから、ハイエナの狩りの成功は、偽の目に左右されないと考えられます。
描いた目は、どんな相手にも効く万能のお守りではないのです。
そして、この工夫が試される場面は、これから増えるかもしれません。
強いエルニーニョ現象(太平洋の赤道付近で海面の水温が高くなる現象)の影響で、今年はアフリカ南部が干ばつになるという予報が多く出ています。
バンダマさんの経験では、干ばつになると牧畜をする人たちは緑の牧草を求めて保護区に入り込み、捕食者も農場や家々をより頻繁に襲うことがあるといいます。
柵や犬で守るだけでなく、捕食者の「ためらい」を利用するという発想が、野生動物と人がぶつかり合う土地で家畜を守る手がかりになりつつあるのかもしれません。
絵に描いた目は、少なくともライオンやヒョウに対しては、案外ばかにできないもののようです。




















