ワクチンを打った9人に何が起きたのか?

では、ワクチンを打った9人のその後はどうだったのでしょうか?
手術からの追跡期間の中央値が40.2カ月(ワクチン開始からは34.7カ月)の時点で、9人のうち腎臓がんが再発した人は1人もいませんでした。
中央値とは、9人の追跡期間を短い順に並べたときに真ん中にくる値で、40.2カ月はおよそ3年4カ月にあたります。
また、投与量を制限しなければならないほどの副作用(用量制限毒性)も見られませんでした。
研究チームが調べたのは、再発の有無だけではありません。
9人全員で、ワクチンに入れた目印にT細胞(免疫細胞の一種)が反応するようになっていたのです。
その中には、VHL、PBRM1、BAP1、KDM5C、PIK3CA(いずれも遺伝子の名前)といった、腎臓がんのドライバー変異に由来する目印への反応も含まれていました。
さらに接種後は血液中で特定のT細胞の集団が増え、その状態は最後の接種から何年もたっても続いていました。
反応の中心になっていたのは、他の免疫細胞を助ける役割を持つ「CD4陽性T細胞」でした。
研究チームは、CD4陽性T細胞が、がん細胞を攻撃するCD8陽性T細胞を後押ししたり、自らがんに働きかけたりすることで、がんへの免疫に重要な役割を果たしている可能性があると考えています。
そして注目されるのが、9人中7人で、T細胞が患者自身の腫瘍の細胞に反応したことです。
つまりこのワクチンは、予測した目印に反応するだけでなく、本物のがん細胞を見分ける免疫を引き出した可能性があるのです。
研究チームは、変異の少ない腎臓がんでも全員分のワクチンを作れたうえ、主要なドライバー変異を狙ってがんへの免疫を引き出せることが示されたと述べています。
研究チームはまた、手術でがんを取り切り、目に見えないほど小さながんしか残っていない時期こそ、このワクチンを使うのに理想的な場面だと考えています。
がんが大きく広がった状態では、これまで個別ワクチンの効果は控えめにとどまってきたからです。
敵の数が少ないうちなら、訓練された免疫が残ったがんを片づけられるかもしれない、というわけです。





















