脳までの道は、体がつぶれるほど狭い

夏の湖や川で泳いでいて、鼻に水が入ってツンとした経験は誰にでもあります。
ごくまれに、その水の中に厄介なものが混じっていることがあります。
「脳を食べるアメーバ」と呼ばれるネグレリア・フォーレリです。
ふだんは温かい淡水の底を這い回り、泥の中の細菌を食べて暮らしている、ただの単細胞生物です。
ところが鼻の奥まで入り込むと、話が変わります。
鼻の奥には、においを感じ取って脳へ伝える神経の束が集まっています。
アメーバはこの束に沿って這い上がり、鼻の奥と脳を仕切る骨(篩板)にあいた小さな穴をくぐって、脳にたどり着きます。
そこで組織を食べながら増え、原発性アメーバ性髄膜脳炎という感染症を引き起こします。
論文によれば致死率はおよそ95%で、患者の多くは子どもです。
ただし、このアメーバは人間の脳を狙って生きているわけではありません。
「私たちは、このアメーバのライフサイクル(生活環)の一部ではないのです」と、筆頭著者でマサチューセッツ大学ダートマス校の細胞生物学者カトリーナ・ヴェル氏は話しています。
ですが人間を狙って進化したわけでもないのに、なぜこのアメーバは小さな体で、鼻の奥から脳までの細く入り組んだ道のりを進み切ることができるのでしょうか?
においの神経はぎっしりと束になっていて、そのあいだに残された隙間はごくわずかです。
骨にあいた穴も、その先の脳の組織も同じです。
どの道をたどるにしても、脳にたどり着くには、この狭さを通り抜けるしかありません。
そこで研究者たちは、ネグレリアの仲間が体のつぶれるほど狭い隙間に置かれたとき、どう動くのかを確かめることにしました。
このアメーバは、狭い場所に出くわしたとき、避けて通るのでしょうか、それとも入っていくのでしょうか?






















