「閉所好き症」のアメーバ

狭い場所に押し込まれると、アメーバの動き方はどう変わるのか。
答えを得るために研究者たちはまず、危険な本物の代わりに、病気を起こさない近縁種(ネグレリア・グルベリ)を調べることにしました。
脳を食べるアメーバと同じネグレリアの仲間で、ふるまいもよく似ています。
また実験ではアメーバの体より細い、幅2〜8マイクロメートル(1000分の2〜8ミリ)の通路(マイクロチャネル)が並んだ皿にアメーバを入れ、その動きを顕微鏡で追いました。
狭い道がアメーバにとってただの障害物なら、入り口の前で向きを変えて離れていくはずです。
入ったとしても、体を押しつぶされて、外よりものろのろとしか進めないでしょう。
ところが、アメーバは入り口に集まってきました。
1本、ときには何本もの通路へ突起を差し込み、中を探り始めたのです。
幅8マイクロメートルの通路では、入り口に触れたアメーバの65〜100%が中へ入り込み、離れていったのは多くても2割足らずでした。
幅2マイクロメートルの通路は細すぎて入れませんでしたが、それでも入り口に何度も突起を差し込んでいました。
段ボール箱を見つけると、用もないのに潜り込んでしまう猫のような隙間好きぶりです。
研究チームはこの性質を、閉所恐怖症(クラウストロフォビア)の「恐怖(フォビア)」を「好き(フィリア)」に入れ替えた「クラウストロフィリア」という言葉で呼んでいます。
閉所恐怖症にならって訳せば、「閉所好き症」といったところです。
次に研究者たちは、このふるまいがアメーバならどれも見せるものなのかを確かめるため、森の土にすむ別のアメーバ、キイロタマホコリカビでも同じ実験をしました。
(※「迷路を解く粘菌」として話題になったモジホコリは真正粘菌ですが、キイロタマホコリカビは細胞性粘菌で別系統です)
するとキイロタマホコリカビは、ネグレリアが入れなかった幅2マイクロメートルの通路にさえ入り込めることがわかりました。
ただ入り込む率は違っており、平均すると、入り口に触れても4匹に1匹以上が離れていき、中まで入ったのは多くても半分ほどでした。
通路の中で外より速くなることもなく、進み方もネグレリアほどまっすぐではありません。
細い通路を通り抜けられることと、そこへ入りたがる性質の強さや、入ったら突き進む強さは、種によって違ったわけです。
そしてネグレリアは、狭い道を苦手とするどころか、狭い道でこそ迷わず進むアメーバだったのです。
それなら、この小さな体には、狭い場所を突き進むための特別な仕掛けが備わっているはずです。
人の体とは縁のないはずのアメーバが、なぜそんな仕掛けを身につけているのでしょうか?






















