最近「雷から反物質が大量に作られている」という、大変興味深いニュースがありました。
http://www.asahi.com/articles/ASKCN6W22KCNPLBJ00C.html
反物質とは、物質と出会うと光を放って消えてしまうという不思議な物質です。まるでファンタジーのような物質ですから、「こんな身近なところに反物質があったのか」という驚きが聞こえるのも無理はありません。
そんな反物質ですが、今年10月、みんな大好き「欧州原子核研究機構」 – 通称CERNが反陽子を精密に調べたところ、「宇宙は存在するはずがない」という結果が出ました。
そんなこと言っても、私はこの文章を書いているし、あなたはこの文章を読んでいます。宇宙が存在するから私やあなたが存在するはずです。
妙だな〜変だな〜。
それでは、これまで組み立てられてきた物理学や宇宙論に間違いがあるのでしょうか? 今回はこの不思議な物質「反物質」と、宇宙の始まりについてのお話です。
https://www.nature.com/articles/nature24048
現代物理学では物質の勝利の理由を説明できない
この宇宙は、ビッグバンのすぐ後に起きた、物質と反物質のはげしい争いの結果生まれました。約138億年前のことです。この争いは皆さんご存知の通り、物質の勝利です。そのおかげで、銀河や星、惑星が生まれました。そしてその結果、私、あなた、海を漂う船、ハムスター、ビールなどが現在存在しているわけです。ところが現代物理学の理論からは、なぜ物質が勝てたのか説明が出来ません。
現代の物理理論で計算すると、物質と反物質はちょうど同じ分量だけ存在していたはずでした。そうすると、物質が反物質と衝突して、物質も反物質も消えてしまいます。それこそビッグバンの直後に、パッと消滅してしまうはずなのです。
現代物理学では、ひとつの素粒子に対して、質量やスピンは同じだけれども量子数の符号だけが逆の素粒子が存在する、という理論があります。陽子には反陽子、電子には陽電子、ニュートリノには反ニュートリノが存在するのです。
ここまでならば、整然としたきれいな理論ですよね。しかしながら、素粒子と反素粒子では、量子数の“数”が少し違うはずだ、と考えられています。そうでなければ、現在の宇宙に、反物質がほとんどなく、物質だらけである事実の説明がつかないのです。ピッタリ同じなら、パッと消滅していたはずですから。