57個のうち燃えたのは2個、石油のせいでもなかった

同じ場所で採り、同じ手順で乾かして砕いた石は、どれも同じようにふるまったのか?
アメリカ地質調査所のエイミー・ガートマン氏らの研究チームの手元には、2022年の調査航海で無人探査機ジェイソンが集めた、エスカナバ・トラフ4地域の岩石57個がありました。
試料は凍らせたまま水分を抜く凍結乾燥にかけられ、そのあと分析のために粉にされます。
57個のうち、金属硫化物を主成分としていたのは41個。
その41個のなかで、手で割った段階で熱と煙を上げたのは2個だけでした。
残りは、同じ手順で同じように砕かれても、何も起こしませんでした。
燃えた2個の主成分は、白鉄鉱(マーカサイト)という硫化鉄の鉱物でした。
燃えたあとの石を調べると、中身は、鉄が酸素と結びついた物質(マグヘマイト)に変わっていました。
表面が焦げたのではありません。
石の中の硫黄が燃えて気体となって抜け、あとに残った鉄が酸素と結びついていたのです。
ただ、この海域には、ほかにも燃えうるものがありました。
石油です。
エスカナバ・トラフは、陸から流れ込んだ厚い堆積物に埋もれた熱水地帯です。
堆積物が熱水に温められると、石油が作られます。
それが金属硫化物の鉱物にまぎれこむことは、この海域では以前から知られていました。
石油もまた、自分で熱を出して燃える物質です。
しかし、燃えた2個に含まれる有機物由来の炭素の量は、燃えなかった石と変わりませんでした。
試料を少しずつ温めながら重さの変化を測る試験でも、自分から熱を出したのは、燃えた2個から取り分けた試料だけでした。
有機炭素を3倍以上多く含む堆積物を同じように温めても、自分から熱を出す反応は現れませんでした。
さらに、試料が自分から熱を出したときに減った重さは、含まれていた有機炭素の量を、最大で10倍も上回っていました。
まぎれこんだ油をすべて燃やしたとしても、まるで足りない量です。
燃えていたのは、石そのものでした。
しかも白鉄鉱は、燃える危険のある鉱物として名前が挙がることの少ない鉱物です。
その白鉄鉱が、なぜ割っただけで燃え出すほど不安定になっていたのでしょうか。




