危ないのは海の底ではなく、船の上で水を切るとき

手で割っただけで熱と煙が出るのなら、同じことは海の上でも起こりえます。
海底から引き上げられた石は、空気に触れ、温度も圧力も湿り気も変わり、海の底とはまるで違う場所に置かれることになるとアメリカ地質調査所は説明しています。
場所が変われば、石がどれだけ反応し、どれだけ熱を出すかも変わりうるとしています。
論文が注意を向けているのは、採る瞬間よりも、そのあとの処理です。
海の中で岩を割るぶんには、まわりの水が熱を奪っていくので、危険は小さくてすむと論文は見ています。
危ないのは船に上げてからです。
計画されている深海の採掘では、引き上げた鉱石の水を切る作業まで、船の上で行います。
そこでさらに砕いたり、水を抜きすぎたりすると、新たに熱を出すきっかけを作りかねないと論文は指摘しています。
陸の鉱山での経験では、完全に乾くより手前の、中途半端に水分が残った状態がとくに危ないと報告されています。
裏を返せば、止め方もそこにあります。
酸素か水のどちらかを取り除けば、反応は進みません。
水を抜けない事情があるなら、むしろ水を足すほうがよいと論文は書いています。
出てくる熱を水に吸わせてしまえば、燃え出すのを防げるからです。
水は、すっかり抜くかたっぷり与えるかで味方になり、中途半端に残っているときだけ敵になるということです。
ただし、今回調べられたのは、海底に顔を出している小山や煙突から採った石です。
実際の採掘で大量に掘り出されるのはその下に埋もれた鉱石で、そちらは現代の海底からほとんど採取されていません。
それでも、海から引き上げて乾かし、手で割っただけで100℃を超える石が実在することは、実験室で確かめられました。
海底の採掘にそなえた発火の評価も、現場の設備も、まだどこにも用意されていません。
研究チームは、陸の鉱山の経験をそのまま持ち込むのではなく、深海から来た石に合わせた危険評価と対策を用意することが、危険を管理する助けになると提言しています。
資源がどこにどれだけ眠っているかを知るだけでは、足りないということです。




