アルツハイマー病では働き、前頭側頭型認知症では働かなかった脳の一か所

好きな曲が流れているとき、脳のどこが反応し、どこに差が出るのか?
答えを探すために、研究チームはまず、参加者一人ひとりに自分の好きな曲を選んでもらいました。
そこからサビなど、いちばんその曲らしい10秒を切り出します。
比べるために流したのは、研究者が選んだ聞き慣れない曲と、何も流さない静かな時間です。
聞き慣れない曲は、穏やかで曲調の変化が少ない1曲を全員に共通で使いました。
歌声の有無は本人の好きな曲に合わせ、音量も同じにそろえてあります。
参加したのは、アルツハイマー病の人、前頭側頭型認知症の人、そしてもの忘れが気になって受診したものの、検査では認知機能に問題のなかった人の、合わせて60人です。
認知症の参加者は、軽度から中等度の人たちでした。
脳の様子は、機能的MRIという方法で調べました。
曲を聴いているあいだに働きが強まった場所が、明かりのように浮かび上がる撮り方です。
装置の大きな音が曲の邪魔をしないよう、撮影をいったん止め、その合間に曲を流す工夫もしています。
参加者は歌うわけでも踊るわけでもなく、ただ横になって聴くだけ。
好きな曲、聞き慣れない曲、静かな時間が代わる代わる流れて、全部で13分ほどの実験でした。
すると、3つのグループのどれでも、好きな曲のほうが強い反応を引き起こしました。
認知症があっても、脳にとって2種類の音楽は「どちらも同じ音」ではなかったのです。
ただし、明かりのともり方は同じではありませんでした。
アルツハイマー病のグループでも、検査で問題のなかったグループと同じく広い範囲が反応していました。
一方で、前頭側頭型認知症のグループでは、反応した範囲が全体として狭めでした。
そして、はっきり差が出た場所があります。
補足運動野です。

好きな曲と聞き慣れない曲の反応の差を3グループで見比べると、ほかの2グループではこの場所に明かりがともり、前頭側頭型認知症のグループではともりませんでした。
音を受け取る場所などは、このグループでもちゃんと反応していました。
ほかの2グループより反応が弱かったのは、「運動」と名のつくこの一か所だけです。
体を動かす実験ではないのに、なぜ「運動」と名のつく場所で差が出たのでしょうか?




