倒れた跡の土の中では、何が起きていたのか
死んだばかりの跡では、まず見た目の変化が目立ちます。
ゾウの重い体に押しつぶされ、集まった死肉食いの動物にも踏み荒らされて、草が倒れてしまうのです。

死骸のまわりには、草のはげた地面が広がります。
けれども、植物を押しのけていたのは体の重さだけではありませんでした。
ゾウの死骸からは、大量の栄養が土にしみ出していたのです。
平均すると、窒素をふくむ栄養の一種であるアンモニウムは、周りの土の31倍に増えていました。
同じく窒素をふくむ硝酸塩は7倍、リンは3倍です。
リンが長く残る理由として、風化していくゾウの骨が、ゆっくり効く肥料のようにリンを出し続けている可能性が挙げられています。

とくに死んだばかりの跡では、アンモニウムが周りの約3,000倍に達していました。
ふだんならコップ3,000杯分の水に溶けている量が、たった1杯に溶けこんでいるような濃さです。
筆頭著者のコートニー・リード氏は「新しい跡では土の窒素濃度が最大3,000倍にもなる。とんでもないことだ」と話します。
栄養が増えるならよさそうですが、話はそう単純ではありません。
これほど濃いアンモニウムは、植物にとって毒にもなりうるからです。
実際、死骸の跡では植物の種類の豊かさ(多様性)が、周りのサバンナよりはっきり低くなっていました。
しかも、死後7年以上たっても回復の気配はほとんど見られませんでした。

バークパイル氏は、この栄養の洪水が「植物の顔ぶれを実質ゼロにリセットする」と表現しています。
目に見えない土の微生物でも、似たことが起きていました。
細菌の多様性は跡地で低いままで、死骸が古くなっても、はっきりした変化は見られなかったのです。
一方、カビのなかま(真菌)も多様性は下がっていましたが、こちらは時間とともに回復していました。
また、アンモニウムが濃い場所ほど、細菌と植物の多様性が低いという関係も見つかりました。
ただしこれは関連で、チームは細菌についてはアンモニウムが多様性を下げた「可能性が高い」という言い方にとどめ、植物については、とくに死んで間もない跡地で多様性が下がった理由の一つとみています。
その一方で、土の中の働きはむしろ活発になっていました。
微生物が土の中で呼吸する量が、死後およそ1〜2年にわたって増えていたのです。

ほかの研究では、シカのなかまのエルクやバイソンの死骸だと、この増加は半年もたたずに終わります。
ゾウでは、その影響が少なくとも2倍は長く続いた計算です。
生き物の種類は減るのに、土の働きは高まる。ゾウの跡地は、そんなちぐはぐな場所になっていたのです。




