7年たっても草食動物が通い続けた理由
では、地上で暮らす動物たちにとって、この跡地はどんな場所だったのでしょうか。
跡地には、ゾウやインパラ、シマウマ、バッファロー、クーズー、イボイノシシなど、多くの草食動物がやってきました。
ときには、ミナミシロサイの姿もありました。

なかでも数が飛びぬけて多かったのが、インパラとバッファローです。
記録された数は、インパラが2万2827頭、バッファローが1,628頭でした。
どちらも、死骸の跡では外の場所に比べて約3倍よく草を食べていました。
草がどれだけ食べられたかを示す指標でも、跡地のほうがはっきり高くなっていました。
しかもその差は、死骸が古くなるほど、むしろ大きくなっていたのです。
動物たちを引きつけたのは、跡地に生える草の中身だと考えられています。
跡地の草は、栄養の目安になる窒素を、外の草の約1.5倍ふくんでいました。
同じ量の窒素をとるのに、跡地の草なら外の草の約3分の2の重さですむ計算です。
この差は、死骸の古さにかかわらず続いていました。
バークパイル氏は「水っぽいレタスが、みずみずしいロメインレタスに変わるようなもの」とたとえます。
「草はたぶん速く育っているが、栄養たっぷりのえさを求めて草食動物が刈り取ってしまう」とも話しています。
集まった草食動物のフンや尿が跡地をさらに肥やし、それがまた草食動物を呼び寄せるという循環が、影響を長引かせている可能性もあります。

スミット氏も「死後8年ほどたっても土と植物にしるしが残り、草食動物はまだそこを好んで訪れていた」と語ります。
この姿は、クジラの死骸とは少し違います。
バークパイル氏は当初、クジラの死骸とよく似た働きをすると予想していたそうです。
深海はもともと栄養がとても乏しいので、クジラの死骸は四方から生き物を呼び寄せます。

ところがサバンナでは、跡地で植物や細菌の多様性がかえって下がっていたのです。
チームはゾウの死骸を、生き物の多様性が下がる「冷たい点(コールドスポット)」であると同時に、生態系の働きが高まる「熱い点(ホットスポット)」でもあると表現しています。
ただし、調べた跡地は死後7.7年までで、10年たった土を直接測ったわけではありません。
また、調査はクルーガー国立公園の中だけで行われています。
それでも、1頭の死の影響が7年以上続くことは、小さな動物の死骸と比べ、規模でも長さでも際立っています。
チームは、人間が大型動物を絶滅へ追いやれば、死後に残す影響まで失うおそれがあると指摘しています。
サバンナで、ある一角にだけインパラがしきりに集まって草をはんでいたら、そこは何年も前にゾウが倒れた場所かもしれません。
ゾウは姿を消したあとも、サバンナの人気食堂の店主を続けているようです。
ここからは、鯨骨生物群集をもっと知りたい人へ
鯨骨生物群集とは、海の底に沈んだクジラの死骸に集まって暮らす生き物たちのことです

鯨骨生物群集(げいこつせいぶつぐんしゅう)とは、海の底に届いたクジラの死骸をすみかや食べ物にする、生き物たちの集まりのことです。
深い海の栄養は、ふだんは海面近くから落ちてくるものでまかなわれています。
そうした深い海にクジラの死骸が届くと、そのまわりでは分解が進むにつれて、集まる生き物の顔ぶれが入れかわっていきます。
はじめに、肉などのやわらかい部分が、死肉を食べる生き物たちによって数か月で食べつくされます。
死骸から散らばった有機物のかけらは、1年以上にわたって、近くの海底にたまった泥や砂を豊かにします。
肉がなくなったあとも、骨は背骨のない動物が取りつく硬い足場になり、骨の中の有機物が腐って出る硫化物(硫黄をふくむ物質)でも生き物を養うため、数年から数十年にわたって豊かな集まりを支えます。
2019年の調査では、米国のモントレー湾国立海洋保護区にあるデイビッドソン海山の近くで、海面下およそ3,240メートル(1万623フィート)に沈んだクジラの死骸を、研究者たちが見つけています。






もう怒ったゾウ💢🐘
海成の地層で、「ノジュール」という堅い塊が産出し、しばしばその中心に化石を含みます。生物遺体からしみ出した石灰分が周囲の土砂をコンクリート化するそうです。
とすると、陸成の地層でも、周囲との硬度の違いをたよりに、大型の爬虫類や古代哺乳類の死骸のあった地面を見つけることができるかもしれませんね