かわいた草原を、鼻を地面近くにたらしながら横向きに歩く、大きな耳のアフリカゾウ No.0023

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ゾウ

Elephantidae

陸でいちばん大きな動物。
長い鼻を手のように使い、低い声で遠くのなかまと連絡をとり合う。

ナゾロジーの記事
36本
よく育ったアフリカゾウのオスの体重
5.2〜6.9トン
妊娠期間(アフリカゾウ)
約22か月

ゾウは、いま生きている陸の動物でいちばん大きな哺乳類です。アフリカゾウ・マルミミゾウ・アジアゾウの3種がいて、鼻と上くちびるがのびた長い鼻を手のように使います。メスと子どもが家族の群れでくらし、人には聞こえない低い声でも連絡をとり合います。

図鑑データ

分類
哺乳類 › 長鼻目 › ゾウ科(長鼻目で今も生き残っているのはゾウ科だけ)
学名
Elephantidae(ゾウ科)。アフリカゾウ Loxodonta africana、マルミミゾウ Loxodonta cyclotis、アジアゾウ Elephas maximus
英名
elephant(エレファント)
漢字
象
種類
いまいるのは3種(マルミミゾウは、かつてアフリカゾウの亜種とされていた)。インドゾウはアジアゾウの亜種
大きさ
よく育ったアフリカゾウのオスの多くは肩の高さ3.04〜3.36m・体重5.2〜6.9トン。アジアゾウのオスは平均で肩の高さ約2.75m・体重約4トン
体のつくり
鼻と上くちびるがのびた長い鼻、前歯がのびた牙、熱をにがす大きな耳
すみか
サハラ砂漠より南のアフリカ、インド亜大陸と東南アジア。サバンナ、森林、砂漠、湿地など
日本では
野生のゾウはいない(大昔はナウマンゾウなどがいた)。動物園で飼われている
食べもの
草、木の葉、小枝、果実、樹皮、根など。1日に150kgほど
寿命
野生で60〜70歳ほど。飼育されたアジアゾウで86歳の記録
保全状況
IUCN レッドリストで、アフリカゾウとアジアゾウは絶滅危惧IB類(EN)、マルミミゾウは絶滅危惧IA類(CR)

ゾウとは(何類・何科? 種類は?)

ゾウは、陸にすむ哺乳類です。「長鼻目(ちょうびもく)」という長い鼻をもつ動物のなかまで、その中で今も生き残っているのは「ゾウ科」だけです。いま生きている陸の動物の中で、いちばん大きな動物でもあります。

いまいるゾウは、次の3種とされています。絶滅したマンモスも、同じゾウ科のなかまです。

  • アフリカゾウ(サバンナゾウ):サハラ砂漠より南のアフリカにすみます。3種の中でいちばん大きく、耳もいちばん大きな種です。
  • マルミミゾウ:アフリカの中部・西部の熱帯雨林にすみます。3種の中でいちばん小さく、名前のとおり耳が小さく丸みをおびています。「シンリンゾウ」とも呼ばれます。
  • アジアゾウ:インドから東南アジアにすみます。インドゾウやスマトラゾウは、アジアゾウの「亜種」(同じ種の中の、地域ごとのグループ)です。

マルミミゾウは、長いあいだアフリカゾウの亜種とされてきました。遺伝子などの研究から、いまは別の種として扱われています(以前は亜種とされていました)。

いま生きている動物の中で、ゾウにいちばん近い親せきは、ジュゴンやマナティーのなかま(海牛類)と、ハイラックスです。

緑の草むらに立ち、白い牙を前に出してこちらを向く、耳の小さなアジアゾウ
アジアゾウのオス写真: Yathin S Krishnappa(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

アフリカゾウとアジアゾウの見分け方

  • 耳:アフリカゾウの耳は大きく、肩までおおいます。アジアゾウの耳は小さめです。
  • 背中:アフリカゾウの背中は、まん中がくぼんでいます。アジアゾウは、丸く盛り上がっているか平らです。
  • 頭:アジアゾウのおでこには、2つのこぶのようなふくらみがあり、体でいちばん高い所は頭です。
  • 鼻の先:アフリカゾウの鼻先には、指のような突起が2つあります。アジアゾウは1つです。
  • 牙:アフリカゾウは、オスにもメスにも牙があります。アジアゾウで大きな牙をもつのはオスだけで、メスの牙はとても小さいか、ありません。
灰色で描かれた3本のゾウの鼻先。鼻の穴が2つずつ見え、先にある突起の数や形がちがう画像はイメージです
鼻先のちがい写真: DagdaMor(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

大きさと体の特徴(何トン? 何メートル?)

ゾウは、いま生きている陸の動物でいちばん大きく、重い動物です。3種の中でいちばん大きいのはアフリカゾウで、次がアジアゾウ、いちばん小さいのがマルミミゾウです。

アフリカゾウのおとなのオスは、よく育った場合、肩の高さが3.04〜3.36m、体重が5.2〜6.9トンほどになります。メスはひとまわり小さく、肩の高さ2.47〜2.73m、体重2.6〜3.5トンほどです。よく測られた中でいちばん大きかったのは、1974年にアンゴラでしとめられたオスで、肩の高さ3.96m、体重はおよそ10.4トンと計算されています。

アジアゾウは、おとなのオスで平均の肩の高さ約2.75m・体重約4トン、メスで約2.40m・約2.7トンです。マルミミゾウは研究によって数字に幅がありますが、2015年の研究では、おとなのオスで平均の肩の高さ2.2m・体重2トンほどとされています。生まれたばかりの赤ちゃんでも、体重は100〜120kgほどあります。

方眼の上に、2人の人のシルエットと、大きさのちがう何頭ものアフリカゾウのシルエットがならんだ図画像はイメージです
アフリカゾウと人の大きさくらべ写真: Steveoc 86(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

人とくらべると、おとなのアフリカゾウは、肩の高さだけでおとなの人の背丈をはるかにこえます。

  • 牙:上あごの前歯(切歯)がのびたものです。長いあいだのびつづけます(マルミミゾウのメスのように、おとなになるとのびなくなるものもいます)。土をほる、木の皮をはぐ、物を動かす、戦うといったことに使います。人に右ききと左ききがあるように、ゾウにもよく使うほうの牙があります。アフリカゾウの牙の最長記録は3.51mです。
  • 耳:耳はうすく、細い血管がたくさん通っています。耳をパタパタと動かして、血液の熱を外へにがします。いちばん暑い所にすむアフリカゾウの耳がいちばん大きく、2m×1.5mにもなります。
  • 皮ふ:背中などの皮ふは厚さ2.5cmほどで、とてもじょうぶです。でも敏感で、日焼けや虫さされを防ぎ、うるおいを保つために泥あびをします。泥あびのあとには、鼻で砂やほこりを体に吹きかけ、それがかわいて皮ふを守る膜になります。
  • 汗:汗を出す汗腺は、足の指のあいだにしかありません。皮ふのしわやひび割れに水をためて、その水が蒸発するときに体を冷やします。
  • 歯:奥歯(臼歯)は大きな板のような形です。すり減ると、後ろから新しい歯が出てきて、古い歯を前へ押し出すように入れかわります。ふつう6組目が最後の奥歯になります。
  • 足:足の裏に、やわらかいクッションのようなつくりがあり、重い体をささえて、歩くときの音も小さくします。
草原の中で、長く白い牙を前につき出して横向きに立つアフリカゾウ
長い牙をもつアフリカゾウのオス写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

頭の骨の中には、空気の入ったすき間がたくさんあり、内側はハチの巣のようなつくりです。そのおかげで、大きな頭の骨が軽くなり、しかもじょうぶになっています。脳は4.5〜5.5kgあり、陸の哺乳類でいちばん大きな脳です。

展示台の上に立つ、大きな頭と太い足の骨をもつゾウの全身骨格
アフリカゾウの骨格写真: Wagner Souza e Silva(Museum of Veterinary Anatomy FMVZ USP)(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

体は大きいものの、ゾウはジャンプも、ウマのようなギャロップもできません。速く進むときでも4本の足がすべて地面からはなれる瞬間はなく、前足は走るように、後ろ足は歩くように動かして、最高で時速25kmほどです。一方で泳ぐのは得意で、6時間も泳ぎつづけることができます。

かわいた草原で、鼻を体にむけ、わき腹に赤茶色の砂をふりかけているゾウ
砂あびをするアフリカゾウ写真: Giles Laurent(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

長い鼻のしくみ(なぜ長い? 骨はある?)

ゾウの長い鼻は、鼻と上くちびるが、おなかの中で育つあいだにくっついてのびたものです。鼻の中に骨はなく、脂肪もわずかで、最大15万個もの筋肉のたば(筋束)でできています。「曲げる」「ねじる」「のび縮みする」の3つの動きを組み合わせて、ほぼ自由自在に動かせます。

鼻先は、人の手のように使えます。350kgまでの物を持ち上げる力がある一方で、ピーナッツのからを、中の豆をこわさずに割ることもできます。7mの高さまで届き、泥や砂の下をほって水を探すこともできます。鼻はにおいをかぐ器官でもあり、ゾウの嗅覚は、鼻がよいことで知られるイヌのブラッドハウンドの4倍すぐれているかもしれない、とされています。

水は鼻で飲むの?

ゾウは、鼻で水を吸い上げてから、その水を口の中に流しこんで飲みます。吸い上げた水を体にかけて、水あびをすることもあります。おとなのアジアゾウの鼻には、8.5Lの水をためられます。水の中では、鼻をシュノーケルのように水面から出して息をします。

2021年の研究では、ゾウは鼻の穴の半径を最大30%広げて、鼻の中の容積を64%ふやせることが分かりました。息を吸いこむ速さは秒速150m以上と見積もられ、人のくしゃみのおよそ30倍です。この強い吸いこみで、水だけでなく、小さな食べものも掃除機のように吸い寄せてつかむことができます。

ナゾロジーでくわしく水4Lを1.5秒で飲み干す!ゾウの鼻の吸引スピードは「時速540キロ」に達すると判明

木々を背に、丸めた鼻の先を口に入れ、水をしたたらせているアフリカゾウ
鼻で水を飲むアフリカゾウ写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

鼻が長くなったわけ

ゾウのなかま(長鼻類)でいちばん古いものは、約6000万年前のアフリカにいた、体重3〜8kgほどの小さな動物でした。進化するにつれてゾウのなかまの体は大きくなり、それとともに頭が大きく、首が短くなりました。鼻は、遠くまで届くように長くのびていったと考えられています。

いまのゾウも首が短く、立ったままでは口を地面につけられません。そのため、長い鼻で食べものや水を口まで運んでいます。

どこにすんでいる?(日本にはいる?)

アフリカゾウは、サハラ砂漠より南のアフリカに広くすんでいます。森林、草原、湿地、農地のほか、マリやナミビアでは砂漠に近い所でもくらしています。アフリカゾウがいちばん多い国はボツワナです。

マルミミゾウは、アフリカの中部から西部の熱帯雨林にすみます。いちばん大きな安定した集団は、中部アフリカのガボンにいます。

森にかこまれた浅い水の中に立つ、まっすぐな牙のゾウと、そのそばの子ゾウ
森の水場のマルミミゾウ写真: Thomas Breuer(CC BY 2.5) / Wikimedia Commons

アジアゾウは、西はインドから東はボルネオ島まで、北はネパールから南はスマトラ島までの、インド亜大陸と東南アジアにすんでいます。2019年の見積もりでは、野生のアジアゾウは48,323〜51,680頭で、そのうち2万7000〜2万9000頭がインドにいます。人の多い地域にすむため、まわりを人の土地にかこまれた小さな森に、閉じこめられたようになっている群れもあります。

どの種も、水が手に入るときは、水場の近くにいることが多い動物です。

ナゾロジーでくわしくアンゴラの”幽霊ゾウ”の「意外なルーツ」が判明

日本に野生のゾウはいる?

いまの日本に、野生のゾウはいません。でも、大昔の日本列島には、ナウマンゾウなどのゾウのなかまがすんでいました。ナウマンゾウは旧石器時代の人びとの狩りの獲物になり、日本では約2万年前に絶滅したとされています。

いまの日本では、ゾウは動物園で飼われています。ただ、日本の動物園でゾウに自然に赤ちゃんが生まれた例は、とても少ないとされています。2025年8月には、広島市安佐動物公園でマルミミゾウのオスの赤ちゃん「アオ」が生まれ、マルミミゾウの国内初の繁殖になりました。

何を食べる?(1日の量・うんち)

ゾウは、植物だけを食べる草食動物です。草、木の葉、小枝、果実、樹皮、根などを食べます。場所や季節によって、草を多く食べたり、木の葉や枝を多く食べたりします。

体が大きいので、食べる量もたくさんです。アフリカゾウもアジアゾウも、1日に150kgほどの植物を食べます。水は、アフリカゾウで1日に180〜230L、アジアゾウで80〜200L飲みます。アジアゾウは、一日の50〜75%の時間を食べることに使います。

食べたものの半分も消化されず、小腸と大腸を合わせた長さは35mにもなります。おとなのゾウは、1日に平均100kgものふんをします。また、ミネラル(塩分など)をとるために、泥や岩塩を食べることもあります。

2023年の研究では、ケニアの2つの家族の群れのふんからDNAを調べ、少なくとも367の分類群(種や属など)の植物を食べていることが分かりました。雨の時期には草を多く、かわいた時期にはほかの植物を多く食べ、季節に合わせてメニューを変えていました。

ナゾロジーでくわしくゾウは人と同じく「ごはんのメニュー」を毎日変えていた!

2026年には、ケニアのエルゴン山の周辺で、地元の野生動物の見回り役や元レンジャー、長老などから話を聞いた研究が発表されました。具合の悪そうなゾウが、薬になる植物を選んで食べていたという目撃談が集められ、ゾウが植物を薬のように使っている可能性がある、と報告されています(聞き取りにもとづく報告です)。

ナゾロジーでくわしくゾウが薬草で自分や子をケアする行動を報告

森や草原をつくるゾウ

ゾウは、まわりの環境を大きく変えるため、生態系の「キーストーン種(かなめになる種)」と呼ばれます。木をたおしてサバンナを草原に変えたり、かわいた時期に地面をほって、ほかの動物も使える水場をつくったりします。

種を運ぶ役目も大きく、マルミミゾウは、果実を食べて、消化しきれなかった種を少なくとも5km先まで、ふんといっしょに運びます。ゾウのふんは、フンコロガシやサルの食べものにもなります。

ゾウが苦手なアリ

ケニアのサバンナには、木の中にアリをすまわせる「ホイッスリングソーン」というアカシアのなかまの木があります。2010年の研究では、ゾウはアリのいる木をさけ、アリを取りのぞいた木は大きくいためつけました。小さなアリが、大きなゾウから木を守っているのです。ただし、外から入ってきた別のアリがこの関係をこわし、木がゾウに食べられやすくなっている地域もあります(2024年の研究)。

家族の群れと頭のよさ

メスと子どもたちは、家族の群れでくらします。アフリカゾウの家族の群れを率いるのは、ふつういちばん年上のメスで、「女家長(マトリアーク)」と呼ばれます。ケニアのアンボセリ国立公園では、家族の群れは平均10頭ほどです。いくつもの家族が集まったり分かれたりしながら、ゆるやかなつながりをもってくらしています。

オスは思春期をむかえると群れをはなれ、1頭だけか、オスどうしの群れでくらします。オスの群れでは年上のオスがリーダーになり、年上のオスがいると、若いオスの乱暴なふるまいがおさえられるようです。

赤ちゃんは群れのみんなに注目され、鼻でさわられたり、なでられたりします。母親以外のメスが、子守りを手伝う群れもあります。

森の中の土の道を、大きなゾウと、その足元の小さな赤ちゃんゾウがならんで歩いている
赤ちゃんをつれたアフリカゾウ写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

子どもを守る(天敵は?)

おとなのゾウは体が大きいため、おそう動物はほとんどいません。ただし、子どもはアフリカではライオンやブチハイエナ、リカオンに、アジアではトラにおそわれることがあります。そのため群れのおとなたちは、子どもを囲んで守ります。おとなのゾウが、みんなでライオンを追いはらうこともあります。

人には聞こえない低い声と「足で聞く」しくみ

ゾウは、鼻をとおして出すラッパのような声のほか、うなり声やほえ声など、いろいろな声を出します。中でも「ランブル」と呼ばれる低い声には、人の耳には聞こえないほど低い音(超低周波音)がふくまれます。アフリカゾウの声は15〜35ヘルツほどで、何kmも先まで届き、10km以上届くこともあるかもしれないとされます。

ゾウは、地面のふるえ(振動)も連絡に使います。足をふみ鳴らしたときの振動は、最大32km先まで伝わるとされます。ゾウの足の裏はとても敏感で、耳だけでなく、足の裏でも地面のふるえを感じとっていると考えられています。

あいさつのときは、おたがいの口や、目と耳のあいだにある側頭腺などに鼻でさわって、においの手がかりをとり合います。

名前で呼び合う?

2024年の研究では、野生のアフリカゾウが、相手ごとにちがう鳴き声で呼びかけていることが報告されました。機械学習で調べると、鳴き声のつくりから「だれに向けた声か」を当てることができました。また、自分あての声を聞かせると、ほかのゾウあての声よりも強く反応しました。イルカやオウムは相手の声をまねて呼びかけますが、ゾウは相手の声をまねずに、人の名前のような呼び方をしているのかもしれません。

ナゾロジーでくわしくアフリカゾウは互いに「名前」で呼び合っている!?ヒト以外で初!

鏡の中の自分が分かる

ゾウは、とても頭のよい動物の一つです。2006年には、3頭のアジアゾウに大きな鏡を見せる実験が行われ、鏡を使って、自分の頭につけられた印をさわるようすが確かめられました。鏡に映るのが自分だと分かる「鏡像自己認識」の能力で、類人猿やイルカでも知られています。

道具も使います。アジアゾウが、木の枝をハエをはらう道具として使いやすいように手を加えるようすが観察されています。記憶力がよいことでも知られ、広い範囲の地図のような記憶をもっている可能性があります。タイのチェンマイなどでは、ゾウが絵を描く「芸」が見せ物になっていて、アメリカの動物園で絵を描くことで有名になったゾウもいます。

仲間の死に向き合う

ゾウは、仲間の骨にひきつけられ、血のつながりがなくても近づいて調べます。死にかけた仲間や死んだ仲間に、ほかの群れのゾウまで寄ってきて、さわったり助けようとしたりすることもあります。ただし、これが人のような「悲しみ」なのかどうかは、研究者のあいだでも意見が分かれています。

2022年の研究では、YouTubeの動画からアジアゾウの行動を調べ、おとなのメスが死んだ子どもを運ぶ行動などが記録されました。2024年には、インドのベンガル地方北部で、アジアゾウが死んだ子ゾウを茶畑の水路にうめたとみられる例が5件報告されました。子ゾウは鼻や足で運ばれ、脚を上に向けた姿勢でうめられていました。その後ゾウたちは、うめた場所のそばの道をさけていたといいます。

ナゾロジーでくわしくアジアゾウは我が子の死を嘆いて土中に埋葬する

寿命と増え方(妊娠期間は約22か月)

野生のゾウは、60〜70歳ほどまで生きます。記録では、台湾の台北市立動物園で飼われていたアジアゾウの「林旺(リンワン)」が86歳まで生きました。日本では、井の頭自然文化園(東京都)のアジアゾウ「はな子」が2016年に69歳で死に、日本で飼われた中でいちばん長生きのゾウになりました。

動物園のゾウ舎の中、緑色の柵の向こうに立つ、灰色の年老いたゾウ
井の頭自然文化園の「はな子」写真: Kakidai(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

動物園のゾウの寿命については、2008年の研究で、ヨーロッパの動物園のアフリカゾウのメスは寿命の中央値が約17年で、比べた野生の群れより短いと報告されています。一方で、野生とあまり変わらないとする研究もあります。

おとなのオスには、「マスト」と呼ばれる時期があります。男性ホルモンのテストステロンが増えてとても攻撃的になり、目と耳のあいだにある側頭腺から液体が流れ出ます。マストのオスはほかのオスより優位に立ち、子どもを残しやすくなります。

妊娠期間は1年半から2年ほどと、とても長いのが特徴です。アフリカゾウでは約22か月で、哺乳類でいちばん長い妊娠期間です。ふつう1回に1頭を産み、ふたごはときどきです。次の子どもを産むまでには、ふつう数年あきます。

赤ちゃんは、生まれてすぐに立ち上がり、母親についていけるようになります。最初の3か月は母乳だけで育ち、そのあと少しずつ植物も食べはじめますが、少なくとも2歳までは母乳と母親の守りが必要です。子どもをつくれる体になる年齢(性成熟)は、種や育つ環境によってちがい、アジアゾウのメスでは10〜15歳ごろとされます。

がんになりにくいゾウ

体が大きく、細胞の数が多い動物ほど、がんになりやすそうに思えます。ところが実際には、体の大きさとがんのなりやすさには関係が見られません。これは「ペトのパラドックス」と呼ばれます。

2016年の研究では、ゾウのゲノム(全遺伝情報)に、がんをおさえる遺伝子「TP53」が20コピーもあることが分かりました。TP53のコピーがふえたのは、ゾウのなかまの体が大きくなった時期と重なっていて、大きな体になりながらがんを防ぐのに役立ったのではないか、と考えられています。

ナゾロジーでくわしくゾウの「睾丸を外にブラブラさせない」進化が抗がん能力の起源だった

名前の由来と人とのかかわり(日本に来たゾウ)

「ゾウ」は、漢字「象」の音読みです。「象」という字は、ゾウの姿をかたどった象形文字とされます。古代中国でも、殷の時代には黄河のあたりに野生のゾウがすんでいました。中国の古い本『韓非子』には、「生きたゾウを見ることはまれなので、人は死んだゾウの骨から、その生きた姿を思いうかべた」という話があり、「想像」ということばの由来とされています。

日本語には「きさ」という古い呼び名もあり、『日本書紀』では象牙を「きさのき」と呼んでいます。英語の elephant(エレファント)は、ギリシャ語の elephas から来ていて、古代ギリシャでははじめ「象牙」を意味することばでした。

日本にやってきたゾウ

生きたゾウが日本に来たことが分かる、いちばん古い記録は1408年(応永15年)です。東南アジアからの船が若狭国の小浜に入港し、将軍・足利義持への贈りものとして、ゾウを運んできました。

江戸時代の1728年(享保13年)には、8代将軍・徳川吉宗の注文で、ベトナムからオスとメスのアジアゾウが長崎に運ばれました。メスは長崎で死にましたが、7歳のオスは翌年、長崎から江戸まで約1,480kmを74日かけて歩きました。途中の京都では中御門天皇に会い、そのために「従四位広南白象」という位と名前が与えられたといわれます。行く先々で見物人が集まり、ゾウの本や絵、置物などがたくさん作られる「象ブーム」が起きました。

赤い布をかけたゾウの背中に、笠をかぶった象使いが乗っている昔の日本の絵画像はイメージです
江戸時代に京都へ来たゾウ写真: 河鰭実利(『象之図』写本)(Public domain) / Wikimedia Commons

京都の画家・伊藤若冲は、ゾウの絵を数多く残していて、このときに京都でゾウを見たのではないかと考えられています。もっと古く、12〜13世紀の『鳥獣人物戯画』にも、長い鼻や太い足、牙をとらえたゾウの絵があります。

ナゾロジーでくわしく異国の地からはるばると!江戸時代に来日した象はどんな生涯を送ったのか?

第二次世界大戦中の1943年、東京の上野動物園では、空襲でおりがこわれてにげ出すと危ないという理由で、ゾウのジョン、トンキー、花子(ワンリー)が、えさをもらえずに死なされました。この出来事は、物語『かわいそうなぞう』として語りつがれています。戦後の1949年には、タイから「はな子」が、インドから「インディラ」が上野動物園にやってきて、3か月で100万人近くが訪れるゾウ・ブームが起きました。

働くゾウ、ねらわれるゾウ

ゾウは、4,000年以上前のインダス文明のころから、人のために働いてきました。アジアでは今も荷物や人を運ぶ仕事をしているゾウがいて、2000年には13,000〜16,500頭が働いていました。昔は戦争にも使われ、カルタゴの将軍ハンニバルは、アフリカのゾウをつれてアルプス山脈をこえました。

タイには、観光客がゾウの背中に乗る「ゾウ乗り」がありますが、ゾウを慣らすときの虐待が問題になり、やめる施設がふえています。インドネシアでは、2025年12月に、国がゾウ乗りを禁じる通達を出しました。

ゾウにとって大きな問題の一つは、象牙をねらう密猟です。象牙の取引は、20世紀後半にアフリカゾウが大きく数を減らした原因の一つになりました。1989年にはワシントン条約で、象牙の国際取引がほぼ禁止されました。モザンビークのゴロンゴーザ国立公園では、内戦(1977〜1992年)のあいだに牙のあるゾウがねらわれた結果、内戦を生きのびたメスのおよそ51%が牙をもっていなかったと報告されています。内戦のあとに生まれたメスでも、牙のないゾウの割合が高くなっていました。

このほか、すみかの森や草原がへったり分断されたりすることや、畑の作物を食べるゾウと人との争いも、ゾウをおびやかしています。2021年、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、アフリカゾウは「絶滅危惧IB類(EN)」、マルミミゾウは「絶滅危惧IA類(CR)」とされました。アジアゾウも「絶滅危惧IB類(EN)」です。

よくある疑問

ゾウは何類? 何目・何科のなかま?
ゾウは哺乳類です。長鼻目(ちょうびもく)ゾウ科のなかまで、長鼻目のうち今も生き残っているのはゾウ科だけです。いまいるのはアフリカゾウ・マルミミゾウ・アジアゾウの3種で、絶滅したマンモスも同じゾウ科にふくまれます。
ゾウの体重は何トン? 何キロ?
いちばん大きいアフリカゾウでは、よく育ったおとなの多くが、オスで5.2〜6.9トン、メスで2.6〜3.5トンほどです。アジアゾウはオスが平均約4トン、メスが約2.7トンです。生まれたばかりの赤ちゃんでも、100〜120kgほどあります。
ゾウの寿命は? 何年生きる?
野生のゾウは60〜70歳ほどまで生きます。記録では、台湾の台北市立動物園で飼われていたアジアゾウの「林旺(リンワン)」が86歳まで生きました。日本では、井の頭自然文化園の「はな子」が69歳まで生き、日本で飼われた中でいちばん長生きのゾウになりました。
ゾウに天敵はいるの?
おとなのゾウは体がとても大きいため、おそう動物はほとんどいません。ただし、子どもはアフリカではライオンやブチハイエナ、リカオンに、アジアではトラにおそわれることがあり、群れのおとなが子どもを囲んで守ります。まれに、トラがおとなのアジアゾウをしとめた例も記録されています。ゾウの数を大きく減らしてきたのは、象牙をねらう密猟など、人間の活動です。
ゾウは何を食べる? 1日にどれくらい食べる?
植物だけを食べる草食動物で、草や木の葉、小枝、果実、樹皮、根などを食べます。アフリカゾウもアジアゾウも、1日に150kgほどの植物を食べます。水は、アフリカゾウで1日に180〜230L飲みます。
ゾウはなぜ鼻が長いの?
ゾウのなかまは、進化の中で体が大きくなるにつれて頭が大きく、首が短くなり、遠くまで届くように鼻が長くのびたと考えられています。首が短いゾウは、立ったままでは口を地面につけられないため、長い鼻で食べものや水を口に運びます。
ゾウはどれくらいの速さで走れる?
速く進むときで、最高で時速25kmほどです。ただし、ゾウはジャンプやギャロップができず、4本の足がすべて地面からはなれる瞬間はありません。前足は走るように、後ろ足は歩くように動かして進みます。
ゾウが日本に初めて来たのはいつ?
生きたゾウが日本に来たことが分かる、いちばん古い記録は1408年(応永15年)です。東南アジアからの船が若狭国の小浜に着き、将軍・足利義持への贈りものとしてゾウを運んできました。江戸時代の1728年には、将軍・徳川吉宗の注文でベトナムからゾウが運ばれています。

ナゾロジーで読む36本

  1. 01 ゾウが薬草で自分や子をケアする行動を報告
  2. 02 ゾウが実験で見せた「自制心」は一部の人間よりも優れているかもしれない
  3. 03 動物園ではゾウが最も人間が遊びに来るのを喜んでいる
  4. 04 迷子になった生後4カ月のゾウーー研究者が「家族の群れ」と再会させることに成功
  5. 05 アンゴラの”幽霊ゾウ”の「意外なルーツ」が判明

近いなかまの図鑑

同じ哺乳類

参考文献

  1. Pardo MA ほか (2024) African elephants address one another with individually specific name-like calls. Nature Ecology & Evolution
  2. Schulz AK ほか (2021) Suction feeding by elephants. Journal of the Royal Society Interface
  3. Plotnik JM, de Waal FBM, Reiss D (2006) Self-recognition in an Asian elephant. Proceedings of the National Academy of Sciences
  4. Pokharel SS, Sharma N, Sukumar R (2022) Viewing the rare through public lenses: insights into dead calf carrying and other thanatological responses in Asian elephants using YouTube videos. Royal Society Open Science
  5. Kaswan P, Roy A (2024) Unearthing calf burials among Asian Elephants Elephas maximus in northern Bengal, India. Journal of Threatened Taxa
  6. Sulak M ほか (2016) TP53 copy number expansion is associated with the evolution of increased body size and an enhanced DNA damage response in elephants. eLife
  7. Campbell-Staton SC ほか (2021) Ivory poaching and the rapid evolution of tusklessness in African elephants. Science
  8. Gill BA ほか (2023) Foraging history of individual elephants using DNA metabarcoding. Royal Society Open Science
  9. Schultz F ほか (2026) African elephants putatively self-medicate with medicinal plants in the Mount Elgon region, Kenya. Scientific Reports
  10. Goheen JR, Palmer TM (2010) Defensive Plant-Ants Stabilize Megaherbivore-Driven Landscape Change in an African Savanna. Current Biology
  11. Kamaru DN ほか (2024) Disruption of an ant-plant mutualism shapes interactions between lions and their primary prey. Science
  12. Wikipedia「ゾウ」(日本語版)
  13. Wikipedia「Elephant」(英語版)
  14. Wikipedia「アフリカゾウ」(日本語版)
  15. Wikipedia「African bush elephant」(英語版)
  16. Wikipedia「アジアゾウ」(日本語版)
  17. Wikipedia「Asian elephant」(英語版)
  18. Wikipedia「マルミミゾウ」(日本語版)
  19. Wikipedia「African forest elephant」(英語版)
  20. Wikipedia「広南従四位白象」(日本語版)
  21. Wikipedia「実在した象の一覧」(日本語版)
  22. Wikipedia「はな子」(日本語版)
  23. Wikipedia「かわいそうなぞう」(日本語版)
  24. Wikidata「ゾウ Elephantidae」(Q7378)

表紙の写真: Giles Laurent(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。