音で海を「見て」、
名前で呼び合う種もいる。
- ナゾロジーの記事
- 57本
- マイルカ科のなかま
- 約40種
- ハンドウイルカの声の記憶
- 20年以上
イルカは、クジラのなかまのうち、歯をもつ小さな種の呼び名です。音のはね返りでまわりを「見る」エコーロケーションを使います。ハンドウイルカは、1頭ずつちがう「名前」の音で呼び合います。群れで協力して狩りをし、道具を使うものもいます。
図鑑データ
- 分類
- 哺乳類 › 偶蹄目(鯨偶蹄目)› 鯨類 › ハクジラ類(小型の種の呼び名)
- 学名
- Delphinidae(マイルカ科。イルカの多くがふくまれる)
- 英名
- dolphin(ドルフィン)。ネズミイルカ科は porpoise(ポーパス)
- 漢字
- 海豚
- なかま
- マイルカ科に約40種。ほかにネズミイルカ科、カワイルカのなかま
- 大きさ
- ハンドウイルカで体長2〜4m、体重150〜650kg
- すみか
- 世界中の海。川にすむ種もいる
- 日本では
- ハンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、カマイルカ、スナメリなど
- 食べもの
- 魚、イカ、甲殻類
- 寿命
- ハンドウイルカで40〜60年ほど
- 増え方
- ふつう1回に1頭。妊娠期間は12か月(ハンドウイルカ)
- 眠り方
- 脳を半分ずつ休ませる「半球睡眠」
イルカとは(クジラ・シャチとのちがい)
イルカは、海や川で暮らす哺乳類です。魚のような姿ですが、肺で息をし、子どもを産んで母乳で育てます。クジラと同じ鯨類(クジラ類)のなかまで、そのうち歯をもつ「ハクジラ」にふくまれます。
じつは「イルカ」は、生き物の分類の正式なグループ名ではありません。ハクジラのうち体の小さな種をまとめた呼び名で、日本では、おとなの体長が4〜5mほどより小さいものをイルカと呼ぶことが多いのですが、はっきりした決まりはありません。祖先が陸から海へ移り住んだ進化の話は、「クジラ」の項目で紹介しています。
イルカと呼ばれる種の多くは「マイルカ科」に入ります。マイルカ科には約40種がいて、ハンドウイルカやカマイルカのほか、名前に「クジラ」とつくゴンドウクジラや、シャチもふくまれます。ほかに、スナメリなどの「ネズミイルカ科」や、川にすむ「カワイルカ」のなかまもイルカと呼ばれます。いっぽう、名前に「イルカ」とつくシロイルカ(ベルーガ)はイッカク科で、クジラに入れられることもあります。
大きさと体のつくり
いちばん身近なハンドウイルカは、おとなで体長2〜4m、体重150〜650kgほど。冷たい海にすむ群れほど、体が大きい傾向があります。日本の沿岸にいるスナメリは体長1.5〜2m、体重50〜60kgほどで、クジラ類のなかで最も小さな種のひとつです。マイルカ科で最大のシャチは、体長9mほど、体重10トンにもなります。

- 口先と歯:くちばしのように突き出た口先をもつ種が多く、円すい形のとがった歯が並びます。歯の数はハンドウイルカで72〜116本、マイルカでは188〜268本。獲物をつかまえるための歯で、食べものはかまずに丸のみします。
- 鼻の穴(噴気孔):頭のてっぺんに1つあり、水面に出たときに開いて息をします。ハンドウイルカはふつう、1分間に2〜3回息つぎをします。
泳ぐ速さは、速いときで時速30kmほど。ハンドウイルカは、高さ6mまでジャンプできます。

脳を半分ずつ眠らせる
イルカは、息つぎのために自分で水面へ上がらなければなりません。そこで、右の脳と左の脳をかわるがわる休ませる「半球睡眠(はんきゅうすいみん)」という眠り方をします。片方の脳は起きているので、眠りながら息つぎをしたり、敵に気づいたりできます。このとき、眠っている脳と反対側の目を閉じて泳ぎます。この眠り方は、1970年代にイルカの脳波を調べて発見されました。

どこにいる?日本で見られるイルカ
イルカは世界中の海にいます。多くの種は熱帯のあたたかい海を好みますが、冷たい海を好む種もいます。日本のまわりで見られるのは、次のようなイルカです。
- ハンドウイルカ(バンドウイルカ):熱帯から温帯の、世界中の海にいる代表的なイルカです。
- ミナミハンドウイルカ:伊豆諸島や小笠原諸島、天草諸島、奄美大島など、西日本を中心に各地にすみついています。日本でいっしょに泳げるイルカは、多くがこの種です。
- カマイルカ:背びれの形が、草を刈る鎌に似ているのが名前の由来。北太平洋の冷たい海から温帯の海にすみ、日本海やオホーツク海でも見られます。ふつう90頭ほどの群れで行動します。
- スナメリ:背びれがなく、口先も突き出ていない小さなイルカ。水深50m以内の浅い海を好み、仙台湾から東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海などにいます。



川にすむイルカ
カワイルカと呼ばれるなかまは、南アメリカのアマゾン川や、南アジアのガンジス川・インダス川などにすんでいます。水がにごっているため目はとても小さく、おもに音をたよりに泳いだりエサを探したりします。
中国の長江にいたヨウスコウカワイルカは、2006年の調査で1頭も見つからず、事実上絶滅したと考えられています。

何を食べる?狩りのくふう
イルカは肉食で、おもに魚やイカを食べます。群れで協力する狩りが得意で、魚の群れを取り囲んで小さなかたまりに追いつめ、順番に突っこんで食べたり、浅瀬に追いこんだりします。尾びれで魚をたたいて気絶させることもあります。場所によって、独特の技も知られています。
- 海綿(スポンジ)を使う:オーストラリアのシャーク湾では、イルカが口先に海綿をかぶせて、海底の砂の中のエサを探します。口先を守るための「道具」です。2005年の研究で、この技はほぼ母親から娘へと受けつがれていることが分かりました。
- 貝殻を使う:同じシャーク湾には、大きな巻き貝の殻に逃げこんだ魚を、殻ごと水面に持ち上げてゆすり、口の中に落として食べるイルカもいます。こちらは、おもに親子以外のなかまから学んで広まると考えられています。
- 人と協力する:ブラジル南部の町ラグーナでは、イルカがボラの群れを岸の漁師のほうへ追いこみ、イルカの合図で漁師が網を投げます。イルカは網から逃げた魚を食べます。1847年までさかのぼる記録があり、2023年の研究では、協力するイルカは生き残る割合が約13%高いことが分かりました。
ナゾロジーでくわしくイルカが「貝殻」を使って魚を捕らえる技を撮影
ナゾロジーでくわしくヒトとイルカが140年間も協力して漁をするブラジルの漁村「ラグナ」
音で「見る」しくみと、ハンドウイルカの「名前」
エコーロケーション(反響定位)
にごった水や暗い海の中でも、イルカは獲物を見つけられます。短く高い音(クリック音)を出し、物に当たってはね返ってきた音を聞いて、まわりの様子を知るのです。これをエコーロケーション(反響定位)といいます。
音は噴気孔の奥でつくられ、おでこの「メロン」という脂肪のかたまりを通って、前のほうへ集中して送り出されます。はね返ってきた音は、おもに下あごを通って耳の奥へとどきます。これで、相手の形、大きさ、速さ、距離、場所まで分かります。相手に近づくと、はね返りが強くなりすぎないよう、出す音を小さくして調節します。
画像はイメージですハンドウイルカは、口先にならぶ小さなくぼみで、ごく弱い電気を感じとることもできます。
ナゾロジーでくわしくイルカは微弱な「電場」も感知できると判明!獲物の動きや地球磁場を感知している可能性
1頭ずつちがう「名前」の音
ハンドウイルカは、口笛のような音(ホイッスル)でなかまとやりとりします。1頭ずつちがう自分だけのホイッスルをもっていて、これは「シグネチャーホイッスル」と呼ばれます。生まれて1年ほどのあいだに、まわりの音を聞きながら作りあげ、その後はほとんど変わりません。人の「名前」のようなものです。
2013年の研究では、野生のハンドウイルカに、その個体のホイッスルをまねた音を聞かせると、鳴き返して応えました。ハンドウイルカは相手の「名前」をまねて、呼びかけていると考えられます。別の研究では、20年以上はなれていた昔のなかまのホイッスルも覚えていました。
母親は、自分の子どもがそばにいると、ホイッスルをふだんより高く、音の幅も広げて鳴らします。人が赤ちゃんに高い声で話しかけるのと似ています(2023年の研究)。
ナゾロジーでくわしくイルカの母親も子供に話しかけるとき「赤ちゃん言葉」を使っている
群れのくらしと、かしこさ
イルカは群れで暮らします。ハンドウイルカの群れはふつう12頭ほどまでですが、メンバーは決まっておらず、くっついたり分かれたりします。エサの多い場所では、1,000頭をこえる大群になることもあります。けがや病気のなかまを水面へ押し上げて、息つぎを助けることも知られています。

シャーク湾のイルカのオスは、メスをめぐって「同盟」を組みます。2022年の研究では、おとなのオス121頭の関係を調べ、同盟どうしがさらに手を組む3段階のしくみを確かめました。人以外で知られているなかで、最も大きな同盟のネットワークです。
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脳と知能
ハンドウイルカの脳は1,500〜1,700gで、人の脳(1,300〜1,400g)より少し重く、体の大きさを考えに入れた脳の大きさ(脳化指数)は、チンパンジーよりも高いとされます。ただし、脳の大きさだけで知能の高さは決められないとも考えられています。
- 鏡の自分が分かる:2001年の実験では、体に印をつけられた2頭のハンドウイルカが、鏡を使ってその印を確かめるような行動をとりました。
- 文を理解する:音や身ぶりの合図を覚えたハンドウイルカは、「フリスビーを尾でさわってから、とびこえなさい」という指示を、順番どおりに理解しました。
遊ぶイルカ
イルカはよく遊びます。空気の輪(バブルリング)を自分で作ったり、物や小さな生き物を運んだり、投げたり、なかまと取り合ったりします。西オーストラリアのイルカを32年にわたって調べた2024年の研究では、子どものころに、おとなのオスのまねをする遊びをたくさんしたオスほど、のちに多くの子どもを残していました。
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寿命と子育て
ハンドウイルカの寿命は40〜60年ほどで、メスのほうが長生きです。カマイルカも40年かそれ以上生きると考えられています。新江ノ島水族館のカマイルカ「クロス」は、1978年から2025年まで17,447日飼育され、カマイルカの飼育では世界最長の記録です。
ハンドウイルカの妊娠期間は12か月。ふつう1回に1頭を産み、赤ちゃんは尾びれのほうから生まれてきます。生まれたときの体長は1mほどです。子育てをするのは母親で、子どもは長いと6年ほど母親のそばで過ごします。

名前の由来と人とのかかわり
イルカは漢字で「海豚」と書きます。水辺の「ブタ」という見立てはほかの国にもあり、英語には mereswine(海のブタ)という呼び名が、中国にはスナメリをさす「江豚(川のブタ)」という名前があります。
日本では、約5000年前の縄文時代の遺跡(石川県の真脇遺跡)から、イルカの骨が大量に見つかっています。
いまは水族館やイルカウォッチングで親しまれています。沖縄美ら海水族館では、病気で尾びれの約75%を失った「フジ」のために、世界で初めて人工の尾びれが作られました。

ただし、野生のイルカは大きな肉食動物です。福井県の若狭湾では、1頭のミナミハンドウイルカが海水浴客に体当たりやかみつきをくり返し、けが人が出ました。
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イルカにとっての心配ごとは、漁の網にまちがってかかる「混獲」や、海の汚れ、人が出す騒音です。2023年の実験では、まわりがうるさくなると、2頭で力を合わせる課題の成功率が85%から62.5%に下がりました。
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よくある疑問
- イルカは魚?何類なの?
- 哺乳類です。肺で空気を呼吸し、子どもを産んで母乳で育てます。クジラと同じ鯨類のなかまで、祖先は陸で暮らしていた哺乳類です。
- イルカとクジラ、シャチのちがいは?
- 生物学的にはどれも同じ鯨類で、歯をもつハクジラのうち小さな種をイルカと呼んでいます。日本では体長4〜5mほどが目安とされますが、はっきりした決まりはありません。シャチは、イルカの多くと同じマイルカ科にふくまれます。
- 「バンドウイルカ」と「ハンドウイルカ」はちがう種?
- 同じ種の、2通りの呼び名です。もとは九州北部で「ハンドウ」と呼ばれていたとされ、のちに「バンドウイルカ」という呼び方が広まりました。いまでは新聞や論文でも「バンドウイルカ」のほうが多く使われています。なお、ミナミハンドウイルカは別の種です。
- イルカはなぜジャンプするの?
- 理由はいくつも考えられています。移動するときに水面から飛び出すと、空気中は抵抗が小さいので、エネルギーの節約になることがあります。ほかに、なかまへの合図やアピール、遊び、体についた寄生虫を落とすためなどが挙げられています。
- イルカはどうやって眠るの?
- 右の脳と左の脳をかわるがわる休ませる「半球睡眠」で眠ります。片方の脳は起きているので、眠りながら水面で息つぎができます。このとき、眠っている脳と反対側の目を閉じています。
- イルカの寿命はどれくらい?
- ハンドウイルカで40〜60年ほどで、メスのほうが長生きです。カマイルカも40年かそれ以上生きると考えられています。
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- 57 初めての場所で寝ると脳は半覚醒状態になる
参考文献
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- Wild S ほか (2020) Integrating Genetic, Environmental, and Social Networks to Reveal Transmission Pathways of a Dolphin Foraging Innovation. Current Biology
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- Hüttner T ほか (2023) Passive electroreception in bottlenose dolphins (Tursiops truncatus): implication for micro- and large-scale orientation. Journal of Experimental Biology
- King SL, Janik VM (2013) Bottlenose dolphins can use learned vocal labels to address each other. PNAS
- Bruck JN (2013) Decades-long social memory in bottlenose dolphins. Proceedings of the Royal Society B
- Sayigh LS ほか (2023) Bottlenose dolphin mothers modify signature whistles in the presence of their own calves. PNAS
- Connor RC ほか (2022) Strategic intergroup alliances increase access to a contested resource in male bottlenose dolphins. PNAS
- Reiss D, Marino L (2001) Mirror self-recognition in the bottlenose dolphin: A case of cognitive convergence. PNAS
- Holmes KG ほか (2024) Juvenile social play predicts adult reproductive success in male bottlenose dolphins. PNAS
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- Wikipedia「イルカ」(日本語版)
- Wikipedia「マイルカ科」(日本語版)
- Wikipedia「ハンドウイルカ」(日本語版)
- Wikipedia「ミナミハンドウイルカ」(日本語版)
- Wikipedia「カマイルカ」(日本語版)
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- Wikipedia「Dolphin」(英語版)
- Wikipedia「Oceanic dolphin」(英語版)
- Wikipedia「Bottlenose dolphin」(英語版)
- Wikipedia「River dolphin」(英語版)
- Wikipedia「Signature whistle」(英語版)
- Wikipedia「Cetacean intelligence」(英語版)
- Wikidata「dolphin」(Q7369)
表紙の写真: Giles Laurent(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












