あくびに「呼吸」は関係なかった?
研究主任の榎津晨子(えのきづ・あきこ)氏は、愛知県にある南知多ビーチランドにて、飼育下のハンドウイルカ3頭を14日間、計119時間にわたり観察しました。
その結果、「口をゆっくり開け、最大に開けた状態をしばらく維持し、その後急速に閉める」という、あくびに似た行動が5例確認されたのです。
その行動はすべて、イルカが活発に泳いでいない状態で起こっていたことから、チームは「ハンドウイルカはあくびをする」と結論づけました。
あくびは現在のところ、「空気を吸いながら口をゆっくりと開けていき、最大まで開口したところで、短く息を吐きながら急速に閉口する動作」と定義されています。
しかし、イルカが暮らす水中は陸上でのような呼吸ができないことから、あくびは呼吸を伴わなくても可能なのかもしれません。
また、以前から「ヒトの胎児が母親の羊水の中であくびをする」という報告もあることから、あくびの定義の見直しが必要となるようです。
そもそも「あくび」の行動自体が、完全には解明されていません。
あくびは眠かったり、退屈なときに出るので、失礼な態度と受け取られがちです。
しかし近年の研究では、あくびには「脳を冷やして、集中力を高める冷却機能がある」と言われています。
脳は適切な温度で最も活発に働きますが、なんらかの理由で脳の温度が上がると、注意力や集中力が低下し始めます。
そこであくびにより、冷えた空気を吸い込むと同時に口周りの筋肉をリラックスさせ、脳への冷たい血液の流れを増加させることで、温度調節をするのです。
つまり、あくびは失礼な態度というより、集中力を取り戻そうとしている証拠と言えます。
しかし、これが水中に暮らすハンドウイルカにも当てはまるかは分かりません。
研究チームは今後、ハンドウイルカ以外の水生哺乳類で、あくびをする生物が存在するかを調べ、彼らにあくびが必要なの理由を解明していく予定です。
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。