ASDとADHDの「脳接続」はどう違うのか?
ASDとADHDは最もよく知られた神経発達障害であり、それぞれ世界人口の約1~3%と5~7%に影響を及ぼしていると推定されています。
ASDと診断された人々は、社会的なコミュニケーションの困難、反復的な行動、光や音などの感覚刺激への過敏さといった特徴を示します。
一方で、ADHDと診断された人々は、多動性、衝動性、不注意の傾向が強く、長時間にわたって注意を集中することが困難です。
ADHDとASDはしばしば併存して発症し、これまでにも研究が数多く行われてきましたが、それぞれの神経生物学的な基盤の共通点や相違点については、いまだ十分には解明されていません。

そこで研究チームは今回、6歳から19歳までの児童・青少年1万2732人分のデータを用いて、ASDやADHDと診断された人々の脳活動を比較しました。
対象となった脳領域には、感覚・運動信号の中継を担う「視床(ししょう)」、運動や学習に関与する「被殻(ひかくputamen)」、さらに注意、感情、自己認識などをつかさどる複数の神経ネットワークが含まれています。
そしてデータ分析の結果、興味深いことに、ASDではこれらの脳領域やネットワーク間の結びつきが弱まる傾向が見られたのに対し、ADHDでは同じ領域・ネットワーク間で結びつきが強くなる傾向が確認されました。
つまり、ASDでは「接続の弱さ」が、ADHDでは「接続の強さ」が、それぞれの脳に特徴的なサインとなって表れていたのです。