南米チリ沖の「フンボルト海流」に暮らすシャチ集団
今回の主役は、南米チリ沖のフンボルト海流を拠点としているシャチ集団です。
フンボルト海流はペルー海流ともいい、南アメリカ大陸の西岸に沿って北上する海流を指します。
シャチは世界中の海に広く分布していますが、基本的にはメスを中心とした母系社会であり、一つの家族が塊となって特定の海域をホームとします。
これまでの調査で、フンボルト海流にも一つの同じシャチ集団が棲みついていることが知られていました。
ただ一方で、フンボルト海流のシャチ集団がどのような食性を持つタイプなのかはよくわかっていませんでした。
シャチは食性の違いで「5つのタイプ」に分けられる
生物学上、シャチ(学名:Orcinus orca)はすべて一種にまとめられますが、グループごとにかなり特色が異なります。
特にこれまでの調査によると、南半球のシャチは食性とサイズによって以下の5タイプに分類できることがわかっています。
・タイプA:白いアイパッチの大きさが中程度で、主にクロミンククジラやミナミゾウアザラシなどの海洋哺乳類を食べるタイプ
・タイプB1:アイパッチの大きさがAの2倍ほどで、主にウェッデルアザラシを食べるタイプ
・タイプB2:アイパッチの大きさがAの2倍ほどで、主にペンギンと魚類を食べるタイプ
・タイプC:体長とアイパッチも小さく、主にライギョダマシなどの魚類を食べるタイプ
・タイプD:アイパッチが最も小さく、魚を食べるタイプ
(ちなみに北半球のシャチも主に3タイプに分類され、海岸付近に住む「レジデント型」・沖合に住む「オフショア型」・海域を移動しながら暮らす「トランジエント型」があります)
ただ南半球のフンボルト海流に暮らすシャチ集団が、この5タイプのどれに当てはまるかはよくわかっていませんでした。
このタイプ分類を知ることは、特定のシャチ集団を効率的に保護する上でも非常に重要です。
そこで研究チームは今回、フンボルト海流のシャチ集団がどのような食性を持っているかを調査しました。