イルカを捕食している様子を初確認!
本調査ではチーム自らの現地調査に加えて、漁船やホエールウォッチング旅行によって収集された写真や動画などの市民科学データを組み合わせています。
その結果、フンボルト海流のシャチ集団がイルカを捕食している証拠が初めて確認されました。
イルカを食べていたのは一度ではなく、何日も連続してイルカを狩っていたことから、この集団はイルカを常食していると見られています。
シャチの餌食になっていたのは「ハラジロカマイルカ」でした。
本種は名前の通り、黒っぽい背中に反して腹部が白いのが特徴です。
また狩りの手法もかなり過激で残忍なものでした。
シャチ集団は群れで1匹のイルカを囲うと、メスのリーダーがイルカを空中に弾き飛ばしながら何度も衝撃を与えて死に追いやっていたのです。
チームは海洋哺乳類のイルカを常食とすることやアイパッチのサイズなどから、フンボルト海流のシャチ集団は「タイプA」に属すると考えています。
さらに仕留めたイルカはメスのリーダーによって家族に分け与えられていましたが、その順番にもある一定の規則性が見られました。
まず最初にメスのリーダーがイルカの肉を食べた後、幼い子供たちに分け与え、最後に他のオスの成体たちへと回されていたのです。
イルカを家族で食べる様子がこちら。音声はありません。
研究者らは「狩りをした者が最初に子供に食料を与え、最後に大人たちに与えるルールは人間の家族にも似ている」と話しました。
シャチは非常に知能の高い動物であるため、自分たちの生存と繁栄にとって最適な食事ルールも決めているのでしょう。
チームは今後「可能であれば、フンボルト海流のシャチ集団の皮膚サンプルを採取して、遺伝子データを分析したい」と考えています。
しかしシャチは頭が良くて、巧妙に立ち振る舞うので、船で近づいて接触するのはかなり困難を極めるとのこと。
ただ食性や遺伝子データを得ることはシャチの保護活動に役立つため、シャチを守る上では避けて通れないでしょう。