イルカの言語を40年かけて収集・分析
研究チームはAIモデル「DolphinGemma(ドルフィン・ジェマ)」を開発するにあたり、野生のイルカの言語データ収集から開始しました。
調査対象としたのは、中米のバハマ海域に生息している「タイセイヨウマダライルカ(学名:Stenella frontalis)」の個体群です。

イルカのコミュニケーションは、笛のような音(ホイッスル)、クリック音、バーストパルス(短く連続する音)などから成り、まるで音楽のように複雑に構成されています。
これまでの研究で、母子間で用いられる「シグネチャー・ホイッスル(個体名)」や、ケンカ中に出される「バーストパルス音」、求愛や狩りの際の「クリック音のバズ」などが特定されています。
こうした音と行動の関係を40年にわたり調査してきたのが、野生イルカの調査団体「ワイルド・ドルフィン・プロジェクト(WDP)」です。
彼らは非侵襲的なアプローチで、タイセイヨウマダライルカの自然な生活環境を乱さずに、膨大な水中映像と音声データを収集してきました。
この調査により、イルカの鳴き声とそれに対応する行動との関係を分析して、求愛、個体名、ケンカなどの行動と特定の音声の関連性を明らかにすることに成功しています。
チームは、40年かけて収集・分析したこの言語データを用いて、今回のAIモデルを開発しました。