ゾウの鼻は均等には伸びていなかった!
研究チームは今回、アトランタ動物園で飼育されている2頭のアフリカゾウを対象に調査。
まず、鼻だけ出せる柵を用いてゾウを仕切り、柵の向こう側には好物となるエサを台上に置きます。
その後、ゾウが柵の穴から鼻を伸ばして、エサをつかみ取る様子を高速度カメラで撮影しました。
そして映像を分析した結果、ゾウの鼻は先端から根元まで一様には伸びないことがわかったのです。
まず第一に、鼻の上側の皮膚の方が、下側の皮膚よりも伸縮性に富んでいました。
この動きの違いは、ゾウが鼻を体長の10%以上伸ばすときにあらわれます。
チームは、この違いを理解するべく、亡くなったゾウの鼻を解剖し、上下の皮膚を詳しく調べました。
すると、下側の皮膚は浅いシワが寄っているだけなのに対し、上側の皮膚は、先端から根元にかけて、深い折りたたみ状のヒダが密に並んでいたのです。
これにより、上側の皮膚は、下側の皮膚より15%以上も長く伸びることが可能となっていました。
第二に、ゾウの鼻は、全体が均等に伸びるのではなく、先端の方から先に伸び始め、根元に近づくほどあまり伸びないことが判明しています。
下の15秒ほどの動画をご覧ください。
緑のマークが伸び始め前の鼻の位置、赤いマークが伸びている最中の鼻の位置を示します。
これを見ると、先端の方ほどより長く伸びており、根元の方はそれほど伸びていないことがわかります。
この結果について、研究主任のアンドリュー・シュルツ(Andrew Schulz)氏は、次のように話します。
「ゾウは人間と同じように怠け者の一面があり、できる限り楽をしようとします。
ゾウの鼻は先端部に約1リットルの筋肉が、口元に近い部分には約11〜15リットルの筋肉が詰まっています。
鼻の先端部を伸ばして、根元をそれほど動かさないのは、(使う筋肉が少ないので)動かすのが楽だからだと考えられます」
機械工学者でもあるシュルツ氏は、ゾウへの理解を深めるだけでなく、この知見をソフトロボットの分野にも応用することを考えています。
現在のソフトロボットの大半は、「柔軟性」か「頑丈性」のどちらかに特化して作られており、両方を兼ね備えているものはほとんどありません。
一方でゾウの鼻は、柔軟で複雑な動きができながら、分厚い皮膚や筋肉など、頑丈さも備えています。
こうしたゾウの鼻の特性を活かすことができれば、頑丈かつ器用な動きができるニュータイプのロボットアームが作れるかもしれません。