ゾウは鼻を使って4リットルの水を1.5秒で吸引
大人のゾウの鼻は、重さが約100キロあるにもかかわらず、筆を持って絵を描いたり、小さな物を器用につまんだりと繊細な作業ができます。
また、鼻先から空気を吹きかけることで、手の届かない場所のものを引き寄せることも可能です。
こちらは、空気を出して枯葉を集めるゾウの様子。
研究チームは今回、こうした繊細かつ器用な働きの他に、ゾウの鼻の吸引機能を調査しました。
最初の実験では、アトランタ動物園にいる34歳のアフリカゾウ(メス)を対象に、トルティーヤチップスと、角切りにしたルタバガ(根菜)を与え、どのように吸引するかを撮影。
すると、割れやすいトルティーヤチップスは、数センチ離れたところから吸い寄せる方法と、チップに鼻先を押し当てた状態で吸い付ける方法の2つがありました。
また、角切りのルタバガには鼻先をかぶせ、大きな吸引音とともに一気に吸い込んだとのことです。
研究主任のアンドリュー・シュルツ氏は「何度やってもゾウはチップを一切割ることなく器用に吸いつけていた」と話します。
次に、大きな水槽の水をどれくらいの速度で吸引するかを実験。
その結果、鼻の吸引力は予想以上にすさまじく、4リットルの水をわずか1.5秒で吸い込んだのです。
植物の種子であるチアシードを入れた状態で実験したところ、吸引速度と吸い込まれる水の流れが視覚的に示されました。
吸引された水量は、ゾウの鼻内部の広さを考えると、当初予想されていた数値をはるかに超えています。
この謎を解明するため、研究チームは、超音波測定により吸水中のゾウの鼻を画像化しました。
すると、ゾウの鼻は吸引時に内壁が拡張され、直径が広がり、結果的に内部のスペースが約64%増加していたのです。
驚異的な吸引が可能な理由について、シュルツ氏は「ゾウの持つ特殊な呼吸器系が、異常に高い肺圧に対応し、陸上動物では類を見ない強い空気の流れを発生させるからだ」と述べています。
今回判明した吸引メカニズムは、空気の動きで物をつかんだり放すことのできるロボットの開発への応用が期待されています。