遊園地でよく見かける象。象といえば長い鼻と大きな耳、白い牙が特徴的です。ではこの一際目立つ美しい「象牙」は、一体どのように使われているのでしょうか?
子どもたちの素朴な質問に答える「NHK夏休み子ども科学電話相談」の中で、象の牙に関する質問が寄せられていました。
今回は8月31日放送分より、その内容を紹介します。
象の牙は何に使うの?
質問者:象の牙は何のために使うんですか?
象は動物園などで定番の、みんなの人気者です。しかし、象の牙がいつ、どのように使われているかは意外と知られていません。
質問に答えてくれるのは、動物園の元園長さんの成島悦雄先生。牙の働きに答える前に牙について説明します。
象の牙は実は歯が発達したものであり、人でいうところの上顎の前歯だそうです。歯は歯でも鋭く尖っているので犬歯なのかなと思うところですが、そうではありませんでした。
そして、本題の牙の働きについて話が移ります。象の牙にはいくつかの働きがあるようです。
成島先生:この牙の働きっていろんな働きがあるって言いましたけど、1つはねあの大きな牙で地面を掘るんです。
象は水を見つけたり、塩分を含む土を見つけたり、あるいは木の根を食べるために地面を掘るのだそうです。象は池の水を飲んだり、果物を食べたりするイメージが強いので、地面を掘って木の根を食べるのは意外ですね。
2つ目は木の皮を剥ぐためです。実は、象は樹皮も好んで食べるので牙で傷つけて樹皮を剥ぐのです。また、通りに邪魔な木が倒れているときに牙で持ち上げてどかすこともあるようです。
成島先生:あと、やっぱり立派な牙だから、当然オス同士ケンカする時に牙で戦うんだよね。
アフリカゾウの牙は長さ3メートル、重さ90キロにも及びます。おとなしそうに見える象ですが、巨大な牙を振り回して暴れる姿を想像すると恐ろしい動物だなと感じます。
頑丈そうな牙ですが、硬いものにぶつかれば当然折れてしまいます。人の場合は歯が欠けてしまうと生えてくることがありませんが、象の牙は生え伸びてくるそうです。牙は歯の一部ですが、かなり特殊ということです。
象の牙ですが、材質が美しくて加工が容易なために古来より工芸品の素材として利用されてきました。しかし、近年は象牙のために密猟が増えて象が減少したため、ワシントン条約によって密猟は禁止されています。
近年では、アフリカゾウが牙を持たずに生まれてくるというニュースもあります。もともと牙のない象は割合としてはごく少数でしたが、密猟が激しいために牙のない象が生き残って繁殖したためと言われています。
将来牙のある象が絶滅してしまうことがないように、違法な輸出や乱獲を規制するなど、管理の強化が求められています。
「夏休み子ども科学電話相談」の放送は8月31日をもって終了しました。NHKのホームページにて聞き逃し配信など行われているので、ぜひチェックしてみてください。(9月31日まで)
■夏休み子ども科学電話相談