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Credit:Canva . ナゾロジー編集部
biology

ゾウの「睾丸を外にブラブラさせない」進化が抗がん能力の起源だった

2023.06.30 Friday

「熱い睾丸」が鍵でした。

ゾウは人間よりも遥かに多くの細胞を持ちながら、がん化することなく何十年も生きることが可能です。

英国のオックスフォード大学(UO)で行われた研究によって、ゾウに高い抗がん能力があるのは、ゾウの体内に格納されている「熱い睾丸」のせいである可能性が提示されました。

「抗がん能力」と「熱い睾丸」の2つはイマイチ結びつきにくい言葉ですが、研究では多くの事実検討の末に、両者が進化の過程で絡み合う面白い様子が示されています。

いったいなぜ睾丸が熱いと、がんに強く進化するのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年6月27日に『Trends in Ecology & Evolution』にて公開されました。

Hot testicles may hold the secret to elephants’ anti-cancer genes, suggests new study https://phys.org/news/2023-06-hot-testicles-secret-elephants-anti-cancer.html
Uncoupling elephant TP53 and cancer https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/fulltext/S0169-5347(23)00135-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0169534723001350%3Fshowall%3Dtrue#%20

細胞がたくさんある大きな生物は「がん化」しにくい

動物の体の大きさと寿命の関係
動物の体の大きさと寿命の関係 / Credit:genomics.senescence.info

いままでの研究により、自然界の巨人たち、ゾウやクジラの体の大きさは、その細胞のサイズが大きいからではなく、より多くの細胞で形成されているからだという事が明らかになっています。

つまり私たちより遥かに大きな生き物たちは、私たち人間や小さなマウスよりもずっと多くの細胞を持っていることになるのです。

すると、ある事実と矛盾する問題が湧いてきます。

それは、がんの発症が、DNAの変異の蓄積によって起きるという事実です。

もしゾウやクジラの細胞が人間と同じペースで変異を蓄積するなら、細胞数の多い彼らの体はあっという間に腫瘍で覆われ、短命に終わるはずなのです。

しかし現実はむしろ逆です。

興味深いことに、これらの巨大な生き物の体は、人間やマウスよりもむしろがんになることが少ないのです。

これは一般に、”ピートのパラドックス”として知られている現象で、ゾウやクジラなどの大型生物が、私たち人間よりも優れたがん抑止能力を持っていることを示しています。

たとえばクジラの場合、高性能なDNA修復遺伝子が細胞のがん化を防いでいることが知られています。

クジラのDNA修復遺伝子をマウス細胞に組み込みがん耐性の強化に成功

しかし、彼らはどうやってその能力を獲得したのでしょうか?

新たな研究は、これについてゾウの場合の興味深い発見を報告しています。

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