陸から海へ移り住んだ、
地球最大のけもの。
- ナゾロジーの記事
- 74本
- 最大(シロナガスクジラ)
- 29〜30.5m
- クジラ・イルカのなかま
- 86種以上
クジラは、陸の哺乳類から進化して海で暮らすようになった動物のなかま。最大のシロナガスクジラは体長30mほどにもなり、知られているなかで史上最大の動物です。ヒゲでエサをこし取るヒゲクジラと、歯で獲物をとらえるハクジラに分かれます。
図鑑データ
- 分類
- 哺乳類 › 偶蹄目(鯨偶蹄目)› 鯨類(クジラ類)
- 学名
- Cetacea(クジラ類)
- 英名
- whale(ホエール)
- なかま
- クジラ・イルカあわせて少なくとも86種。ヒゲクジラとハクジラに分かれる
- 大きさ
- 体長2.6mほどから、シロナガスクジラの29〜30.5mまで
- すみか
- 世界中の海
- 日本では
- ザトウクジラが小笠原諸島や慶良間諸島で冬を越す。マッコウクジラも近海にすむ
- 食べもの
- オキアミ・小魚(ヒゲクジラ)、魚・イカ(ハクジラ)
- 寿命
- ホッキョククジラは200年以上とされる
- 増え方
- ふつう1回に1頭。妊娠期間は12か月ほど
- 祖先
- 陸の偶蹄類(いちばん近い親戚はカバ)
クジラとは(何類?イルカとのちがい)
クジラは、一生を海で送る哺乳類です。魚のような姿をしていますが、肺で空気を呼吸し、体温を一定に保ち、子どもを産んで母乳で育てます。生き物の分類では「鯨類(クジラ類)」というグループにまとめられ、カバなどと同じ偶蹄類のなかまにふくまれます。
クジラ類は、口に「クジラヒゲ」をもつヒゲクジラと、歯をもつハクジラの2つに大きく分けられます。ハクジラのうち、おとなでも体長5mほどより小さい種を「イルカ」と呼ぶことが多いのですが、これは人が決めた分け方で、クジラとイルカは生物学的にはっきり分かれたグループではありません。クジラ・イルカのなかまは、少なくとも86種が知られています。
大きさと体のつくり
いちばん大きいシロナガスクジラは、確認された最大のもので体長29〜30.5m、体重190トンにもなり、これまで地球にいたことが知られているなかで最大の動物です。いっぽう小さなものでは、体長2.6m、体重135kgほどの種もいます。
2019年の研究では、クジラがここまで大きくなれたのは、体が大きいほど一度にたくさんのエサをとれるからで、大きさの上限はエサの量で決まっていると考えられています。

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- 鼻の穴(噴気孔):鼻の穴は頭のてっぺんにあり、水面で呼吸しやすくなっています。「潮吹き」は、この穴から古い息をいきおいよく吐き出したときに見える白い柱で、形は種によってちがいます。鼻の穴はヒゲクジラでは2つ、ハクジラでは1つです。
- ヒレと尾びれ:前足は胸びれに変わっています。後ろ足は外からは見えませんが、腰の骨のなごりが筋肉の中にうもれています。尾びれは水平についていて、上下に動かして泳ぎます。
- 首:首の骨は陸の哺乳類と同じ7個ですが、平たく、くっついている種もあります。そのため、頭を回すことはできません。
- 脂肪の層:皮ふの下には分厚い脂肪の層があり、寒い海にすむ種では28cmもの厚さになります。体温を保つほか、浮力やエネルギーのたくわえにもなります。
- 耳:耳たぶはなく、耳の穴もふさがっています。音は、のどのあたりから脂肪を通って耳の奥に伝わります。


深くもぐるしくみ
マッコウクジラは2,250mの深さまでもぐり、90分ほど水中にいられます。クジラはもぐるとき、心臓の拍動をおそくして酸素を節約します。シロナガスクジラの心拍数は、もぐっているとき1分間に4〜8回、少ないときはわずか2回で、水面にもどると25〜37回まで上がることが、2019年に確かめられました。

どこにいる?日本の近くでは?
クジラは世界中の海にいます。多くの種は南北の冷たい海を好み、子どもを産むときには赤道に近いあたたかい海へ移動します。ザトウクジラやシロナガスクジラは、何千マイルもの長い旅を、エサを食べずに続けることができます。北半球と南半球では季節が逆になるため、赤道をこえて行き来することはほとんどありません。

日本の近くでは、ザトウクジラが冬に繁殖や子育てのためにやってきて、小笠原諸島や慶良間諸島などで冬を越します。これらのザトウクジラは、アリューシャン列島やオホーツク海などでエサを食べていると考えられています。また、小笠原諸島や奄美諸島の近海には、マッコウクジラのメスと子どもの群れがすみついています。
何を食べる?
クジラはすべて肉食です。ヒゲクジラは、上あごに何百枚も並ぶ「クジラヒゲ」で、オキアミなどのプランクトンや小魚を海水ごとこし取って食べます。クジラヒゲは上あごの皮ふが変化したもので、爪と同じようにのび続け、両側で600枚近くになることもあります。
ハクジラは歯で魚やイカをとらえます。好みがはっきりした種もいて、シロナガスクジラはほぼオキアミだけ、マッコウクジラはイカ、コククジラは海底の小さな生き物を主に食べます。泡をはき出して小魚の群れを囲いこむ「バブルネット(泡の網)」という、漁のような狩りをするクジラもいます。


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クジラのフンやおしっこが海を豊かにする
クジラは深いところでエサを食べ、海面近くでフンをするため、深い海の窒素などの栄養を海面に運び上げる「ホエールポンプ」の役目をしています。アメリカのメイン湾では、その量は年2万3000トンにもなり、流れこむすべての川を合わせたより多いと見積もられています。2025年の研究では、長い旅をするヒゲクジラ4種が、エサ場の栄養を尿などの形で熱帯・亜熱帯の海へ運んでいて、その窒素は年3,784トンになると推定されました。
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歌・ジャンプ・大きな脳(クジラのナゾ)
なぜ歌うの?
ザトウクジラのオスは、冬の繁殖の季節に、いくつもの旋律を組み合わせた複雑な「歌」をうたいます。1曲は数分から30分ほどで、それを何度もくり返します。同じ海域のオスはほぼ同じ歌をうたいますが、歌は少しずつ変わっていきます。2011年の研究では、新しい歌が11年のあいだに、南太平洋の集団から集団へ西から東へと何度も伝わっていったことが分かりました。歌の役目は求愛に関わると考えられていますが、くわしくはまだ議論が続いています。
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ハクジラは、頭の「メロン」という脂肪のかたまりから高い音(クリック音)を出し、そのはね返りでまわりの様子を知るエコーロケーション(反響定位)を使います。マッコウクジラのクリック音は水中で236デシベルに達し、動物が出す音のなかで最も大きいとされます。
ヒゲクジラは、のど(喉頭)にある特別なつくりで低い声を出していることが、2024年に確かめられました。ただし、このしくみでは出せる声の高さや深さに限りがあり、船の騒音から逃れられないことも分かっています。
なぜジャンプするの?
ザトウクジラは、水面から体を大きく飛び出させる「ブリーチング」をよく行います。体の寄生虫をふり落とすため、仲間とのコミュニケーション、遊びなどの説がありますが、本当の理由はまだ分かっていません。繁殖の時期には、オスが自分をアピールするために多く見られます。
脳の大きさ
マッコウクジラの脳は、知られているどの動物よりも大きく、体積は約8,000cm³、重さは人の脳の5倍以上あります。ハクジラのなかには、シロイルカやイッカクのように、体重に対する脳の割合が人に次いで大きい種もいます。

陸から海へ(クジラの祖先と進化)
クジラの祖先は、陸で暮らしていた四本足の哺乳類です。いま生きている動物で最も近い親戚はカバで、どちらも偶蹄類のなかまです。クジラのなかまは5000万年以上前に南アジアで生まれ、約1000万年のあいだに、シカのような草食の陸の動物から、肉食で完全に水中で暮らすクジラへと姿を変えました。
2007年の研究では、南アジアにいたシカに似た小さな偶蹄類「インドヒウス」のなかまがクジラに最も近く、すでに水辺を歩いて暮らしていたことが分かりました。初期のクジラは約4900万年前に海に進出し、それから500万〜1000万年かけて完全に水中で暮らすようになります。そのあいだに、鼻の穴は頭のてっぺんへ移り、前足はヒレに、後ろ足は小さくなってやがて消えていきました。
画像はイメージですペルーで見つかった約4260万年前の「ペレゴケトゥス」は、4本の足の指先に小さなひづめをもち、陸を歩くことも、しっぽを使って泳ぐこともできたと考えられています。約3400万年前には、ヒゲクジラとハクジラに分かれました。

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寿命と子育て
クジラは、ふつう1回に1頭の子どもを産みます。妊娠期間は多くの種で12か月ほどで、生まれた子どもは1〜2年のあいだ母親にたよって育ちます。母親は子どもの口に母乳を噴きだすようにして飲ませます。母乳は脂肪がとても多く、歯みがき粉のようにどろりとしています。おとなになるのは7〜10歳ごろです。
長生きのクジラも多く、ザトウクジラは少なくとも50年以上生き、確認された最高齢は95歳でした。ホッキョククジラは哺乳類でいちばん長生きと考えられていて、200年以上生きるとされます。1999年に発表された研究では、目のレンズの成分から年齢を推定し、100歳をこえるオスが4頭見つかりました。推定211歳の個体も報告されています。
画像はイメージです体が大きく細胞の数がとても多いクジラは、本来ならがんになりやすいはずですが、実際にはがんが特に多いわけではありません。がんをおさえる遺伝子の変化などが、その理由として研究されています。
2026年には、マッコウクジラの出産で、血のつながりのない仲間もふくめた群れ全体が、生まれたばかりの子どもをかわるがわる持ち上げて助ける様子が、ドローンで記録されました。
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人とのかかわり(捕鯨と名前の由来)
人とクジラのかかわりはとても古く、ヨーロッパのビスケー湾のまわりでは、約2万〜1万4000年前の人々がクジラの骨で道具をつくっていました。ブラジル南部では約5000年前のクジラの骨の銛(もり)が見つかり、先住民が大型のクジラをとっていた可能性が示されています。
17〜19世紀には、灯りの燃料になる鯨油などをとるために大規模な商業捕鯨が行われ、多くのクジラが激減しました。1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決めてから、捕獲は大きく減りました。いまも、シロナガスクジラやイワシクジラなどが絶滅危惧種とされています。
日本では、和歌山県の太地町が捕鯨発祥の地といわれ、肉だけでなく、油、ヒゲ、骨まで利用されてきました。マッコウクジラの腸の中でできる「竜涎香(りゅうぜんこう)」は、香料として珍重されました。また、クジラにカツオなどの魚の群れがつくことから、クジラを漁業の神「えびす」と重ねてまつる信仰も各地にありました。
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「クジラ」という名前の由来には、「ク(黒)」と「シラ(白)」で黒と白の体をあらわすという説(貝原益軒『日本釈名』、1700年)など、いくつかの説があります。『万葉集』では、クジラは「イサナ」とも呼ばれました。
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よくある疑問
- クジラは魚?何類なの?
- 哺乳類です。肺で空気を呼吸し、体温を一定に保ち、子どもを産んで母乳で育てます。祖先は陸で暮らす四本足の哺乳類で、いま生きている動物ではカバが最も近い親戚です。
- クジラとイルカのちがいは?
- 生物学的には同じ鯨類のなかまです。歯をもつハクジラのうち、おとなでも体長5mほどより小さい種をイルカと呼ぶことが多いのですが、これは人が決めた分け方です。
- いちばん大きいクジラは?
- シロナガスクジラです。確認された最大のもので体長29〜30.5m、体重190トンになり、知られているなかで地球の歴史上最大の動物です。
- クジラの寿命はどれくらい?
- 種によってちがいます。ザトウクジラは少なくとも50年以上生き、確認された最高齢は95歳でした。ホッキョククジラは哺乳類でいちばん長生きと考えられ、200年以上生きるとされています。
- クジラはなぜジャンプするの?
- 体の寄生虫をふり落とすため、仲間とのコミュニケーション、遊びなどの説がありますが、本当の理由はまだ分かっていません。ザトウクジラでは、繁殖の時期にオスが自分をアピールするために多く見られます。
- 大きなクジラはなぜ水族館にいないの?
- これまでにイッカクやコククジラ、ミンククジラなどを飼う試みがありましたが、多くはうまくいきませんでした。比較的小さいシロイルカは飼われていますが、飼育下での繁殖はむずかしく、つかまえて数か月で死んでしまうことも多いとされています。
ナゾロジーで読む74本
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- 02 ザトウクジラの母、死んだ子に数時間寄り添う姿を観察
- 03 マッコウクジラは動物界で「最大のコミュニケーション音」を発する
- 04 マッコウクジラが「垂直姿勢」で眠れるしくみを解明
- 05 クジラのヒレの中には「5本指の手」が残っている【衝撃の写真】
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- 07 マッコウクジラの発声に「ヒト言語と似た構造」を発見
- 08 【超貴重】マッコウクジラの出産の撮影に成功
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- 11 現存する「最古のザトウクジラの声」の音源を発見
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参考文献
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- Goldbogen JA ほか (2019) Extreme bradycardia and tachycardia in the world's largest animal. PNAS
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- Garland EC ほか (2011) Dynamic Horizontal Cultural Transmission of Humpback Whale Song at the Ocean Basin Scale. Current Biology
- Elemans CPH ほか (2024) Evolutionary novelties underlie sound production in baleen whales. Nature
- Thewissen JGM ほか (2007) Whales originated from aquatic artiodactyls in the Eocene epoch of India. Nature
- Gohar AS ほか (2021) A new protocetid whale offers clues to biogeography and feeding ecology in early cetacean evolution. Proceedings of the Royal Society B
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- McGrath K ほか (2025) Late Paleolithic whale bone tools reveal human and whale ecology in the Bay of Biscay. Nature Communications
- McGrath K ほか (2026) Molecular and zooarchaeological identification of 5000 year old whale-bone harpoons in coastal Brazil. Nature Communications
- Wikipedia「クジラ」(日本語版)
- Wikipedia「シロナガスクジラ」(日本語版)
- Wikipedia「ザトウクジラ」(日本語版)
- Wikipedia「ホッキョククジラ」(日本語版)
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- Wikipedia「Blue whale」(英語版)
- Wikipedia「Humpback whale」(英語版)
- Wikipedia「Bowhead whale」(英語版)
- Wikipedia「Sperm whale」(英語版)
- Wikidata「whale」(Q1865281)
表紙の写真: Giles Laurent(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












