ザトウクジラの歌は太平洋を横断する
ザトウクジラの歌は太平洋を横断する / Credit:Canva
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太平洋を横断して広まるザトウクジラたちの大ヒットソングを発見!

2022.09.09 Friday

私たちは、世界的な大ヒットソングが誕生したり、特定のお菓子が国を超えて流行したりするのを見てきました。

それらが根強く定着することで、新たな音楽文化・食文化が生まれることさえあるでしょう。

実は、ザトウクジラたちも同様の流行や文化的な広がりを経験しています。

イギリスのセント・アンドルーズ大学(University of St Andrews)生物学部に所属するエレン・ガーランド氏ら研究チームが、ザトウクジラの歌が太平洋を横断して広がっていることを発見したのです。

オーストラリアから徐々に広がり、今ではポリネシアやエクアドルでも同じ歌が歌われています。

研究の詳細は、2022年8月31日付の学術誌『Royal Society Open Science』に掲載されました。

Humpback Whale Songs Travel 9,000 Miles Across the Pacific Ocean, Suggesting Remarkable Cultural Evolution https://www.sciencetimes.com/articles/39734/20220905/humpback-whale-songs-travel-9-000-miles-pacific-ocean-suggesting.htm Humpback Whales Pass Their Songs Across Oceans https://www.nytimes.com/2022/08/30/science/humpback-whale-songs-cultural-evolution.html
Humpback whale song revolutions continue to spread from the central into the eastern South Pacific https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.220158

「ザトウクジラの歌」は海域ごとに異なる

ザトウクジラを代表とする特定の種は、「クジラの歌」をことで知られています。

この歌は、私たちの知る音楽や言語のように複雑な構造で成り立っています。

クジラの歌の構成。ユニット、フレーズ、テーマから成り立つ
クジラの歌の構成。ユニット、フレーズ、テーマから成り立つ / Credit:Ellen Garland(University of St Andrews)et al., Royal Society Open Science(2022)

まず、「ユニット(unit)」と呼ばれる短い音を組み合わせた「フレーズ(phrase)」があります。

次に、複数のフレーズが組み合わさって、1つの「テーマ(theme)」がつくられます。

最後に、いくつかのテーマが組み合わさることで1つの「歌」が完成するのです。

クジラが歌う理由は明らかになっていませんが、交配期にオスが歌うことから、研究者たちは「パートナーを選択するのに役立つ」と考えています。

ザトウクジラのオスは最大30分間も歌い続けることさえあるのだとか。

そしてザトウクジラの群れは、繁殖地ごとにほぼ同じ歌を歌うことも知られています。

しかし時には、ユニットを少し変化させて、歌をアレンジすることもあるようです。

新しいフレーズを追加したり、テーマを切り取ったりすることさえあります。

またクジラたちは、近くの群れの歌を真似することもあります。

これにより、ある繁殖地から別の繁殖地へとクジラの歌が流行していくのです。

次ページオーストラリアの歌が1万4000km離れたエクアドルに伝わる

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