オーストラリアの歌が1万4000km離れたエクアドルに伝わる
1996年、オーストラリア・クイーンズランド大学(The University of Queensland)に所属する海洋生物学者マイケル・ノアド氏ら研究チームは、オーストラリア東海岸のある群れが、「地元の歌」から「オーストラリア西海岸の歌」に乗り換えたことに気づきました。
そして2年後、東海岸の全ての群れは「西海岸の歌」を歌っていました。
では、オーストラリア西海岸の歌はどこまで広がるのでしょうか?
ガーランド氏ら研究チームは、2016年から2018年にかけて、太平洋のさまざまな水域でザトウクジラの歌を録音し、ノアド氏が発見した「オーストラリアの歌」と比較することにしました。
その結果、オーストラリアの歌と同じテーマが、オーストラリア東海岸から約6000kmも離れたポリネシア付近の群れでも歌われていると判明。
しかも最終的には、太平洋を越えて8000km離れたエクアドル近海でも、同様のテーマが歌われていたのです。
調査によると、2016~2017年の間、ポリネシアとエクアドルでは全く異なる歌が歌われていました。
つまり、オーストラリアの歌は合計1万4000kmもの距離を伝わっていき、世界的な大流行を引き起こしたのです。
世界地図を見ても分かる通り、この歌は南半球を西から東へと伝わっています。
そのため研究チームは、「今後、南半球を一周する可能性がある」とも指摘。
またガーランド氏は、「これほどの急速な文化的変化(歌の流行)は、他の動物種では見られないこと」だと述べており、今回の研究結果が、クジラの歌の伝達メカニズムを解明するに役立つと考えています。
もしかしたらクジラは、インターネットや電話なしの人間よりも、はるかに流行に敏感で、コミュニケーションや伝達が上手なのかもしれませんね。