
Point
■ザトウクジラには、魚の群れを円状に散布した泡で囲んで漁をする「バブルネット」を使う個体がいる
■この漁法は、夏から冬にかけての移動期間中、なるべく時間と体力を温存するためにクジラが独自に編み出したもの
ザトウクジラには、泡を使った巧みな漁をする個体がいます。
泡を地引き網のようにして魚の群れを捉える様子から、その漁法は「バブルネット」と呼ばれています。
これまで、バブルネット漁を捉えた詳細な映像はありませんでしたが、今回、ハワイ大学マノア校の研究チームが、クジラ視点の映像を入手することに成功しました。
漁師顔負けのクジラの賢さ
チームは、ドローンによる上空からのアングルと、クジラに直接取り付けた主観アングルとの貴重な映像を入手。
これにより、バブルネットの賢いメカニズムが明らかになりました。

まずクジラは獲物となる魚の群れを見つけると、その下側に向かって潜水します。それから群れを頭上にして、円を描くように泳ぎ、同時に噴水孔からバブルを等間隔で放出します。
すると、泡の上昇気流の力で、魚の群れは自然にバブルネットの中央に集まるのです。
研究主任のLars Bejder氏によると「この時、魚たちが逃げないように、クジラは獲物を脅す特殊な音を出してネット内に留まらせている」と言います。とても賢いですね。
あとは、待ち構えていた他のクジラが大口を開けてバブルネットを横切ると、労力なしに獲物をゲットできる…というわけです。

しかしバブルネットは、ザトウクジラすべてができる漁法ではありません。実は、バブルネットは本能的なものではなく、学習して会得されたスキルなのです。
季節に合わせて移住するザトウクジラは、夏の期間をアラスカ沿岸で過ごし、冬に向けてハワイの方に降りてきます。そして、旅の期間は、大人のクジラが次の若い世代を教育する時間に当てられます。
そのせいか、移動中は食料採集に費やす時間が少なく、時間と体力を可能な限り消費しない漁法が必要です。そこで編み出されたのが、バブルネットでした。

バブルネットはいつでも協力的に行われ、バブルを放出する役と捕まった魚を食べる役とで分かれているのです。漁はグループの全員が食事できるまで続きます。こうしたバブルネット漁は、若いクジラたちが大人を見て学習し、次世代へと継承されていくのです。
泡を網がわりにするなんて、漁師顔負けの賢さですね。