Point
■歌う曲を分析することで、そのクジラがどこから来たのかを特定することが可能
■クジラは、旅の途中で出会った他のクジラの歌を学ぶことで、自らの曲に取り入れる習性を持つ
ザトウクジラには、住む地域によってオリジナルの持ち歌があることが知られています。
今回セント・アンドルーズ大学(英)の研究により、クジラの歌う曲の種類で、そのクジラがどこから来たのかを特定できることが明らかになりました。
研究主任のエレン・ガーランド氏は「クジラは旅の途中で出会った他のクジラの歌を取り入れて、自らの曲を変化させますが、曲のベースとなる旋律を見極めることで出身地をピンポイントで特定できる」と話しています。
研究の詳細は、9月4日付けで「Royal Society Open Science」に掲載されました。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.190337
曲のベースで出身地が明らかに
研究チームは2015年の9月から10月にわたり、南太平洋のニュージーランド北東に位置するケルマディック諸島近海や南太平洋の西部・中部などで、クジラの歌の録音調査を行いました。ケルマディック近海は、クジラが移住する際の中継地でもあり、各地のクジラが出会う場所でもあります。
それらの場所で52頭のクジラの歌を分析した結果、研究チームは3タイプの曲を特定することに成功。タイプ1は、クック諸島やフランス領ポリネシアを含む太平洋中部に属し、タイプ2はニューカレドニアやトンガ、ニウエを含む太平洋西部、タイプ3はオーストラリア東部のみに属する曲でした。
これら3タイプの曲を、ケルディック諸島に滞在しているクジラの歌と比較したところ、タイプ1に異なる2つのバージョンが確認されたのです。
これら「タイプ1a」と「タイプ1b」は、中継地で他のコミュニティーに属するクジラ同士が歌を教え合い、自らの曲に取り入れたことで起こる変化とのこと。
「タイプ1a」と「タイプ1b」、および「タイプ2」の実際の音声がこちらです。
一見違う曲に思える2つの曲ですが、ガーランド氏は「曲が変化していても、録音された曲と曲との類似率を分析することで、クジラの出身地が分かる」と指摘します。
それによると、ケルマディック諸島で録音された歌には、オーストラリア西部の歌はゼロ、フランス領ポリネシアとオーストラリア東部が複数、後はすべてニューカレドニアとニウエ、クック諸島の歌であることが特定されています。
時期によっては、仲間内で流行曲やヒットソングも生まれるというクジラの歌。ミリオンヒットを目指して、クジラたちは日々、他の曲を学んで自らの音楽をブラッシュアップさせているようですね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/28588