- クジラが大きくなる理由は、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が多くなる採餌方法にあった
- 特に、ヒゲクジラは、湧昇域と呼ばれるプランクトンが大量に集まるエサ場があるため、狩りの労力が少ない
地球が誇る最大の動物はクジラです。大きな個体だと、全長30m以上、体重150トン越えとなります。
その一方、クジラがここまで大きくなった理由、あるいはこれ以上大きくならない理由については、明確に答えられていませんでした。
ところが今回、新たな研究により、クジラの巨大化は、エネルギー効率の高い採餌方法に理由があることが判明しました。
その方法により、消費エネルギーを上回る多くのエネルギーを摂取することができるようです。
研究の詳細は、12月13日付けで「Science」に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/366/6471/1367
クジラの進化史
最初のクジラが登場したのは、およそ5000万年前のことです。当時のクジラは、4本足を持つ陸上の生物で、サイズも大型犬ほどしかなかったと言われています。それから約1000万年をかけて水中の世界へ移動し、さらに3500万年をかけて、海の巨大生物となっていきました。
そして、真に地球上の最大生物となったのは、ここ500万年のことです(クジラの進化史の動画)。
完全に海に定着するにつれ、クジラは「ヒゲクジラ類」と「ハクジラ類」に大きく分かれます。
ヒゲクジラは、巨大な口を網のように広げて海水ごと飲み込み、そこからエサだけをこしとります。一方のハクジラは、その名の通り、歯を持つクジラで、エコロケーションを駆使して単体の獲物をハントします。
この2つの道に沿って進化すると同時に、海水が深層から表層に湧き上がる「海洋湧昇」というプロセスが起こりました。
湧昇は、海岸と平行に吹く強い風によって生じ、冷たく栄養豊富な海水が深層から湧き上がることで、プランクトンの大量発生を促します。
この恩恵を大きく受けたのは、ヒゲクジラの方でした。
湧昇域は、プランクトンを食料とするヒゲクジラにとって最良のエサ場となります。こうしてヒゲクジラは、労力を減らし、効率よく食事にあずかり、一気に大きくなっていったのです。