数を数えることで子どもの内言が捉えられる

すると、まず大人も子どもも、頭の中で数えたときのほうが、声に出したときよりもばらつきが大きくなることがわかりました。
声に出して話すときには、自分の声を耳で聞くことが、発話のタイミングを調整する手がかりになります[5]。
頭の中で数える場合にはこうした外的な手がかりが乏しいため、同じ言葉の並びを同じテンポで繰り返すことが難しくなる可能性があります。
一方で、頭の中で数えたときで比べると、幼児のばらつきは大人よりとても大きいことがわかりました。
たとえば平均5秒で数える場合、毎回の数唱時間がどの程度ばらつくかを秒に換算すると、大人では約0.25秒、幼児では約0.75秒という計算になります(図3)。
では、幼児の頭の中の声は、発達とともにどのように変わっていくのでしょうか。
幼児の月齢とばらつきの関係を調べると、月齢が高い子ほど、頭の中で数えたときのばらつきが小さくなっていきました。
一方、声に出して数えたときのばらつきは、月齢と関係がありませんでした。
もし年齢とともに単に「数を唱えるのがうまくなる」だけなら、声に出したときも安定していくはずです。
そうならなかったことは、この指標が数を唱える力ではなく、頭の中の声の安定化を捉えていることを示しています。
さらに、数える速さも月齢とは関係がありませんでした。
成長とともに変わっていったのは、速さではなく、ぶれなさだったのです。
そして、この結果だけでなく、私たちはもう一つ、興味深い結果を得ました。
子どもが「頭の中だけ」で数えられるようになる目安は5歳ごろだった
私たちは、内言条件で、どの子どもにも「唇や手など体を使わず、頭の中だけで数える」というルールを設けていました。
ところが実際には、何度挑戦しても声が漏れてしまったり、指を使って数えたり、唇を動かしたりする子どもたちがいました。
こうして77人のうち19人、およそ4人に1人が、手順を守れなかったり、数える時間が極端だったりして、分析から外れました。
頭の中だけで数えきれた子と、それが難しかった子。
両者の月齢を比べると、こなせた子のほうが年上でした。
月齢の真ん中の値(中央値)は、こなせた子が66か月(5歳6か月)、こなせなかった子が53か月(4歳5か月)です。
このことから、声や指に頼らず頭の中だけで数えられるようになる目安は、およそ5歳ごろだと考えられます。
一部の先行研究では、音の似た単語を覚える記憶課題などから、幼い子どもでは頭の中で単語の音を再生する能力が明瞭に捉えられず、6~8歳ごろになるとその指標がはっきり現れることが報告されていました[6]。
しかし、こうした年齢差には、幼い子どもにとって課題そのものが難しいことによる影響が含まれる可能性も指摘されてきました[7]。
今回の研究は、課題の重さを極限まで削ぎ落とすことで、新しい結果を得ることができた可能性があります。
また、指を使ったり唇を動かしたりした子どもたちも、単に内言に「失敗」したわけではない可能性もあります。
外に出していた声が頭の中へ入っていく途中の段階にあり、体の動きが、まだ不安定な頭の中の声を支える補助輪として働いているのかもしれないからです。




