時間をあけて2回測ると、粒に何が起きたのか?
そこでチームが使ったのは、直径2.7マイクロメートル、1ミリの約370分の1という、シリカ(ガラスの原料になる物質)でできた小さな粒です。
この粒を、界面活性剤(かいめんかっせいざい、せっけんや洗剤の仲間の物質)を溶かした液体に浮かべました。
この液体の中では、界面活性剤がスパゲッティのような網目を作り、たえず組み替わっています。
網目がゆがんでから落ち着いていく速さの目安(緩和時間)は、約6秒です。
粒が動くと網目がゆがみ、ゆがんだ網目が粒を押し返して、その後の動きを左右します。

つまり網目は、粒の過去の動きを覚えている「隠れた記憶」の役目を果たしているのです。
チームは、強くしぼったレーザー光(光ピンセット)で、粒をおわんの底のようなくぼみに閉じ込めました。

粒の位置は、1秒に100回の速さで記録しました。
位置の空間分解能はプラスマイナス5ナノメートルで、粒の直径の約540分の1という細かさです。
一方で、網目そのものの動きは、この実験では直接は見えません。
そこでチームは、時間をあけて粒の位置を2回測り、結果の組み合わせごとに、その後の粒のエネルギーの変化を追いました。
測るといっても、粒の位置を細かく読むのではなく、決めた線より左にいるか右にいるかを見分けるだけの簡単なものです。
まず、2回の測定の間を1秒あけた場合です。
2回目の結果が同じでも、1回目の結果しだいで、その後のエネルギーの落ち着き方が大きく変わりました。
2回測れば、網目の記憶をとらえられることを示す結果です。
なかでも目を引いたのは、ある決まった結果の組み合わせになった粒です。
この粒のエネルギーは、素直に一方向へ変わっていくのではなく、途中で向きを変える(非単調な)動きを見せました。

隠れた網目から粒へエネルギーが戻ってきたことを示す、直接の実験的な証拠です。
では、間を200秒、つまり3分以上あけるとどうなるでしょうか。
このときは1回目の結果に関係なく、2回目の結果だけでその後の動きが決まりました。
間をあけるうちに網目が落ち着ききり、前の状態をもう覚えていなかったためです。
エネルギーは寄り道をせず、上からも下からも平均の値へまっすぐ近づいていきました。
1回だけ測った場合の動きも、この200秒あけた場合とほぼ同じでした。
1回だけ測るのは2回の間隔をゼロにしたのにあたり、間隔は長すぎても短すぎても記憶の効果は消えてしまいます。
記憶が読めるのは、網目がまだ粒のことを覚えている間に2回目を測ったときだけなのです。





