根は腐ったリンゴの前でどう動いたのか
研究チームはまず、研究によく使われる植物のシロイヌナズナを、いくつもの容器で育てました。

そのうち一部の容器には、腐ったリンゴのかけらを点々と置いておきます。
根が伸びていく先に、わざと「腐敗の場所」をつくっておくためです。
こうした腐敗の場所は、寒天の上だけでなく、自然の土の中にもつくって確かめています。
すると、腐敗の場所に出くわした根は、腐ったリンゴを避けるように曲がって伸びていきました。
一方、腐った物を置かなかった容器では、根はそのまままっすぐ伸びていきました。

同じ実験をトマトやコムギで行っても、似た結果が得られています。
つまりこの動きは、1種類の植物だけに見られる特殊な癖ではなさそうです。
研究チームはこの動きを「サプロトロピズム(saprotropism)」と名付けました。
これまで知られていなかった屈性で、根が枯れたり腐ったりした植物の組織を避けて曲がる動きを指します。
ダーウィンの時代から知られてきた屈性は、主に重力や光、水、塩分といった、生き物ではない刺激によるものでした。

ところが、腐った動物の組織に出会わせた場合には、根に影響は見られませんでした。
根は、腐ったものなら何でも避けるわけではなかったのです。
では、なぜ根は腐った植物を避ける必要があるのでしょうか。
調べると、腐った植物の体には、根にとって害になる微生物が集まる場所ができていました。
そこに根が直接ふれると、根の伸びが抑えられ、植物の育ちも悪くなったのです。
腐った仲間の体は、根にとって「敵だらけの場所」だったといえます。
チャン氏らは、この避ける動きが病原体から身を守るのに役立っている可能性を考えています。
動物が嫌な臭いを手がかりに、腐った食べ物を避けるのと似た働きというわけです。
さらに注目すべきは、根を腐った植物の近くに、触れないように置いた実験です。
この場合も根は、一貫して腐敗のある方向から離れるように曲がっていきました。
根は危ない場所に触れる手前で、その存在に気づき、進路を変えていたのです。




