・「DNAメチル化」のパターンをアルゴリズムにかけることで、人の「生物学的な年齢」を測定できる
・イギリスで1099人のデータを検証した結果、若い頃に両親が社会経済的に苦しい立場であった人ほど、生物学的な年齢が「年上」であるとされた
・具体的にその「老化」につながった要因は分かっておらず、さらなる検証が必要とされる
遺伝子発現をコントロールするための重要なメカニズムとして、「DNAメチル化」があります。これによって私たちの遺伝子の「オン・オフ」や発現量が左右されており、がん細胞の形成にも関わってくる非常に重要な仕組みです。
新たな研究によって、こ私たちの「若い頃」の環境が、ゲノム全体のDNAのメチル化パターンに影響を及ぼしていることがわかりました。若い頃に厳しい環境にいた大人ほど、「メチル化パターンを指標とした年齢」が高いことが示唆されています。
Socioeconomic Position and DNA Methylation Age Acceleration Across the Life Course
DNAメチル化においては、メチル基がDNAに付着することとなりますが、これによる変化は体系的です。血液のサンプルを採ってメチル化パターンをアルゴリズムにかけることによって、人の生物学的な「年齢」を見積もることができます。
研究では、1099人の成人イギリス人のデータを検証して、社会経済的に恵まれないことが、DNAメチル化による「老化」とどう関連しているのかについて調査しました。血液のサンプルと同時に、同一人物における過去12年間の社会経済的状況についての情報や、その人物が14歳だった頃の両親の社会的なポジションの情報も受け取りました。

その結果、DNAメチル化による推定年齢と明確な関連性が見られたのは、「14歳のときの両親の社会的ポジション」といった項目のみでした。両親が一般労働者の子どもは、両親が管理職や専門職である場合と比べて、およそ「1歳」も生物学的な年齢が年上だったのです。さらに、両親が働いていない場合や死亡している場合は、使われたアルゴリズムによって「2.4歳か1.85歳」年上であるとされました。
この結果は、DNAメチル化による「老化」が、人生の初期段階で影響を受けていることを示唆しており、社会経済的なポジションが高い家庭で育った人ほど、その「老化」が進んでいないことを示しています。
具体的にどの要因がそのような生物学的な「老化」を促したのかについてはまだ明らかとされていません。それが「ストレス」かもしれませんし、「住環境」あるいは「食事」かもしれません。
いずれにせよ、この研究にはさらなる検証が必要です。これにより因果関係が明確に示されたわけではありません。しかし、幼い頃の環境が大人になった後も個人の「健康」に暗い影を落とす可能性が示されたことも事実。手遅れにならないためにも、子どもには最大限の支援が求められます。
via: theconversation / translated & text by なかしー




























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