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「史上最高の外国語映画」ベスト100を英BBCが発表 編集部ベスト10付き

2018.11.02 Friday

10月30日、イギリスのBBC Cultureが「史上最高の外国語映画ベスト100」を発表しました。

BBCはこれまでにも「史上最高のアメリカ映画ベスト100」や「21世紀の映画ベスト100」、「史上最高のコメディ映画ベスト100」などの発表を行ってきたものの、どのランキングもアメリカ映画が多くを独占している状態

そこで今回、BBCはハリウッド映画作品から一度離れ、ヨーロッパやアジアなど、世界各国の「英語以外」の映画作品の中から史上最高のベスト100を選出したとのこと。粋な計らいですね。

まずはBBC選定のベスト10をご覧ください。

第1位 『七人の侍』(黒澤明/日/1954年)

第2位 『自転車泥棒』(ヴィットリオ・デ・シーカ/伊/1948年)

Credit:eiga.com

第3位 『東京物語』(小津安二郎/日/1953年)

Credit:eiga.com

第4位 『羅生門』(黒澤明/日/1950年)

第5位 『ゲームの規則』(ジャン・ルノワール/仏/1939年)

第6位 『ペルソナ』(イングマール・ベルイマン/瑞/1966年)

第7位 『8 1/2』(フェデリコ・フェリーニ/伊/1963年)

第8位 『大人は判ってくれない』(フランソワ・トリュフォー/仏/1959年)

第9位 『花様年華』(ウォン・カーウァイ/中/2000年)

第10位 『甘い生活』(フェデリコ・フェリーニ/伊/1960年)

どれも映画史に燦然と輝く名作ばかりで目がくらみます。やたら昔の作品が多いのは、近年のハリウッド映画の人気が上昇したことも影響しているのでしょうか。

そう思うと少し寂しいですが、日本映画が10作品中3作品もランクインしているのは嬉しいところです。やはり黒澤明と小津安二郎は、世界に誇る日本の偉大な監督ですね。

映画好きスタッフが独断と偏見で選んだベスト10

しかし今回BBCが選定した外国語映画は、全部で100作品。この他にまだ90本もあるわけです。

全てを名前だけ紹介するのも味気ないので、今回はその90本の中から、映画マニアの編集部スタッフが完全なる独断と偏見で選んだ「オススメ映画」ベスト10本を紹介します。

第10位 『SHOAH ショア』(クロード・ランズマン/仏/1985年)


本作は、第二次大戦下のホロコーストという人類の暗部を、当事者たちの証言だけをもとに暴き出すドキュメンタリー作品。製作にはおよそ11年もの歳月がかけられており、上映時間はなんと9時間30分にも及びます。

被害者のユダヤ人と加害者の元ナチスの人々の話が入り乱れていくうち、次第に善悪の境界線が崩れていきます。「善」とは何か、「悪」とは何か。忘れてはならないこの暗い記憶は、現代に生きるすべての人に観てほしい必見の一本です。

第9位 『ラ・ジュテ』(クリス・マルケル/仏/1962年)

第三次世界大戦により荒廃したパリ、わずかに生き残った生存者たちは地下へと逃れました。ある日、人体実験に利用されたひとりの男が、人類を救うため過去へと送られますが…。

こちらは先程の『ショア』とは打って変わって、上映時間わずか30分ほどの短編SF作品。しかし侮るなかれ、モノクロで映し出される詩的な映像の美しさには思わずため息がもれるほど。日本のアニメーターである押井守監督にも強い影響を与えた作品です。

第8位 『霧の中の風景』(テオ・アンゲロプロス/希/1988年)

霧の中の風景 Blu-ray

母親と三人で暮らす姉弟は、ドイツに父親がいることを聞き、二人だけで電車に乗って父親に会いに行くことにしました。こうして長い旅が始まりましたが、それはまだ幼い二人にはつらく厳しいもので…。

ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督作品。時の止まった雪の降る街を駆け抜けていく二人の姉弟、波間から浮かび上がる巨大な右手の像、霧の向こう側で一本だけそびえ立つ木。いくつもの印象的なシーンに彩られた本作は、まさに霧に包まれたかのような幻想の世界へと観る人を誘い込むでしょう。

第7位 『第七の封印』(イングマール・ベルイマン/瑞/1957年)

Credit:www.thecinema.jp

十字軍の遠征から故郷に帰ってきたアントニウスは、後を追ってきた死神から死の宣告を受けます。そこでアントニウスは自らの生死を賭けて、死神にチェスの勝負を挑みますが…。

監督は20世紀最高の映画監督という呼び声高い、スウェーデンのイングマール・ベルイマン。死神に先導されて死の舞踏を踊りながら消えゆく死者たちのシーンには、思わず見とれてしまいます。死神にチェスの勝負を挑むというあらすじを聞いただけで、興味を惹かれます。

第6位 『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ/西/1973年)

スペイン内戦直後、不安に揺れる小さな農村にやってきた一本の移動映画、『フランケンシュタイン』。映画に夢中になった純朴な少女アナは、フランケンシュタインの存在を信じて彼を探しに行く。

非常に寡作な監督として知られるエリセ監督ですが、作品ひとつひとつの完成度の高さはお墨付き。小屋の中に隠れていた負傷兵に家から、こっそり持ってきたリンゴを差し出すアナはかわいさ爆発です。

第5位 『ストーカー』(アンドレイ・タルコフスキー/ソ連/1979年)

不思議な力を持つ聖域「ゾーン」。次々と犠牲者が続出するために、政府は「ゾーン」への立ち入りを禁じました。しかし、「ゾーン」には願いが叶う部屋があると噂され、そこへの道案内をする者たちを人々は「ストーカー」と呼びました。

というわけで、ストーカーはストーカーでも、しつこくつきまとう方の「ストーカー」ではありません。そしてタルコフスキー監督作品の見所は、なんといってもその映像の美しさ。セリフを極度に排し、詩的な映像で語るその姿勢は、まさしく映画の「鏡」でしょう。

第4位 『戦艦ポチョムキン』(セルゲイ・エイゼンシュテイン/ソ連/1925年)

Credit:ja.wikipedia.org

1905年に起こった戦艦ポチョムキンの反乱をもとに制作された本作は、肉に湧くうじ虫や、階段を転がり落ちる乳母車など、名シーンのオンパレード。

そして極めつけは映画史上最も有名な6分間と言われる「オデッサの階段」のシーン。その後、多くの作品の中でパロディ化されています。もしかしたら、一度はどこかで見かけたことがあるかも。圧倒的な迫力を持った映像表現は、映画史に革命を起こしたほど。死ぬまでに一度は観ておきたい名作です。

第3位 『大地のうた』(サタジット・レイ/印/1955年)

インドの小さな村に住む少年オプーは、貧乏ながらも両親や姉と一緒につつましく暮らしていました。そんな最中、代々受け継いできた果樹園が借金のかたに取られてしまい…。

インド映画の神様サタジット・レイ監督の作品。オプーを主人公にした三部作の第一作目にして、インド映画の最高傑作と誉れ高い作品です。オプーが駄菓子屋の後を追って走る、姉も走る、そして犬もついてくる。そしてその様子を映す池の水面など、非常に美しい情景が描かれています。インドの土や風の香りが画面から滲み出てくるような映像表現には、驚嘆のひとこと。必見です。

第2位 『アタラント号』(ジャン・ヴィゴ/仏/1934年)

Credit: amazon

結婚したばかりのジュールとジュリエットは、アタラント号という船に乗って旅に出ました。しかし、ジュリエットはあまりに単調な水上生活に耐えきれず、パリの街へと姿を消してしまいます。「水の中で目を開けたら、愛する人の姿が見えるのよ」。その言葉を思い出し、ジュールは船から川の中へと飛び込みます。すると、目の前に自分のもとを去ったジュリエットの姿があらわれ…。

「愛する」という行為は、これ程まで自然に表現できるのかと驚かされます。29歳という若さで亡くなったジャン・ヴィゴ監督の最初にして最後の長編作品ですが、彼がもっと長く生きていたなら、フランス映画史のみならず映画史全体が大きく変わっていたことでしょう。

第1位 『メトロポリス』(フリッツ・ラング/独/1927年)

栄えある第一位は、ドイツの伝説的SF映画『メトロポリス』。

2026年、メトロポリスと呼ばれる未来都市では、裕福な支配階級と貧乏な労働者階級に二分化されていました。労働者階級の娘であるマリアは、労働者たちに団結を促し、この階級社会を変えようとします。しかし彼女を危険視した権力者のフレーダーセンは、マリアに変装したアンドロイドを送り込み、労働者の団結を崩そうと企み…。

未来都市メトロポリスの重厚さ、アンドロイドの造形の美しさ、SF的ストーリーの緻密さ、どこをとっても超絶一級品です。これが1927年に作られているという事実がいまだに信じられません。まさしく、SF映画の原点にして唯一無二の存在と言えるでしょう。

以上、ナゾロジースタッフによる往年の名作TOP10でした。BBCリストでは、この他にもまだまだたくさんの名作映画が紹介されています(※英文)。気になる方は下記URLからぜひチェックしてみてくださいね。

SF映画の歴史を塗り替えた『ブレードランナー』のスゴさとは

SF映画の数式がイラストでわかる!「タイムマシンの物理学」

via:bbc. /translated & text by くらのすけ

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