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脳の健康には「低たんぱく・高炭水化物」の食事が有効と判明! 認知症が食生活で防げる可能性も

2018.11.28 Wednesday

Point
・低たんぱく質で高炭水化物の食事に「脳の老化」を改善する効果があることが判明
・マウスに「低たんぱく高炭水化物」食を無制限に与えると、記憶の形成に関係した神経細胞の突起の数が増加した
・今後は食事のみで認知症を防げる可能性も

シドニー大学のワール氏らの研究で、「低たんぱく高炭水化物」食に脳の老化を改善する効果があることがわかり、認知症の食事療法として期待されています。この研究は11月20日付で雑誌“Cell Reports”に発表されました。

Comparing the Effects of Low-Protein and High-Carbohydrate Diets and Caloric Restriction on Brain Aging in Mice
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(18)31674-7

実験では、マウスに「低たんぱく高炭水化物」食を無制限に与えて脳の変化をみたところ、記憶の形成に関与する「海馬」の「歯状回」という場所の神経細胞の突起が増えていました。この突起は、神経細胞が他の細胞などと情報をやりとりする箇所です。また、「低たんぱく高炭水化物」食には認知能力を改善する効果もありました。ただし、これらの効果の一部はメスにしかみられなかったようです。

しかし、低たんぱく質で高炭水化物の食事は決して新しいものではありません。論文の上席著者であるルクール教授は、「沖縄の伝統的な食事はタンパク質の割合が少なく、今回の研究と同レベルの低たんぱく食です。材料には脂肪の少ない魚や大豆、植物を使っていて、牛肉はほんの少ししか使っていません」とパブリックリリースで述べています。

例えば、沖縄料理のゴーヤチャンプルーは脂肪の少ない大豆がメインとなる料理です。味付けに鰹節や豚エキスを使えば低塩にもなり、健康食といえます。沖縄には魚を使った料理もたくさんありますし、平均寿命が全国でも上位なのも納得です。ただし、沖縄男性の平均寿命は36位(厚生労働省HPより)。ワール氏の実験での効果がメスでしかみられなかったように、食事の効果と性別は関係があるのかもしれません。

またワール氏ら以外でも、マウスの実験による「低たんぱく高炭水化物」食の効果は報告されています。2015年に“Cell Reports”で発表された研究によると、「低たんぱく高炭水化物」食にはインスリン感受性を改善するなどの効果があり、代謝能を改善するそうです。また、同じく脳の老化防止効果があるといわれる「カロリー制限」食に比べ、「低たんぱく高炭水化物」食ではエネルギー消費量が高くなるとのこと。長期的にみれば「低たんぱく高炭水化物」のほうがダイエット効果もありそうですね。さらに、2012年に雑誌“Nature”で発表された研究では、マウスより人に近いアカゲザルの実験でも、「カロリー制限」に老化予防効果はないという報告もあります。

今回の研究結果が人にも応用されるようになれば、食事に気をつけるだけで認知症を防げる可能性があることになります。ガマンしてカロリー制限することなく、低たんぱく高炭水化物で美味しい料理を制限なく食べても健康が保てるのです。もっと研究が進んで、薬を飲まずに美味しい食事だけで健康になれる時代が来ることを期待しましょう。

記憶には「絵を描く」ことが驚異的に効くという研究

via: nibiohneurekalert / text by かどや

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