火星の大気は非常に薄く、地球のおよそ1/100程度であると言われています。そのため、少し離れた場所にいる友人を呼び止めようと思っても声は届かないでしょう。
しかし、それほど「音」を聞くことが難しい環境の中で、日本時間の11月27日早朝に火星への着陸を無事に果たしたNASAの探査機インサイトが、「つむじ風」と思しきものが火星表面を横切る音をとらえました。
インサイトの大きなミッションの1つは、火星の地震、いわゆる「マーズ・クエイク」の音を聞くことです。しかし、インサイトに搭載された地震計はとても敏感であり、ただの風でさえも記録に残すことができる場合があります。
今回録音された音は以下のもの。未加工のデータではその音を聞き取ることができませんが、動画の後半ではピッチをおよそ100倍にすることで、私たちの耳にも届くようになっています。
地震計のプロジェクトに携わるトーマス・パイク氏は、火星の表面が地球の「砂漠」を思い出させるものであるのに対し、その「音」に関しては全く異なっているといった感想を述べています。パイク氏いわく、私たち人間の耳はその「火星の音」に慣れていないようで、それは本当に「別世界」のもののように感じたといいます。
インサイトが風の音を記録することは、重要なミッションの一部でもあります。実際に「地震の音」を聞くとなった際に、それらの雑音を除外することが必要となるため、今のうちにできるだけ多くの風の音のデータを集めておくことが必要となるのです。
そして今回、インサイトはただの風だけでなく「つむじ風」とされる音もとらえています。火星の大気の密度からして、それほど強力なものではありませんが、インサイトのチリを吹き飛ばす程度には威力を持っていたようです。ジグザグに火星表面を動き回るつむじ風は、インサイトの地震計が記録した非常に低い音域の波によってそのエリアに存在していたことが予想されています。
NASAは、より多くの風のデータを集めるために、あと数週間はインサイト周辺の風の音を拾い続ける予定です。そしてその後、地震計と熱伝達プローブを投下する場所を決め、2年間にわたる熱いミッションを開始させる予定です。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/25528
via: businessinsider / translated & text by なかしー