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継続的な「いじめ」が10代の脳を変化させるという研究

2018.12.17 Monday

Point
・青年期の「継続的ないじめ」が脳の特定の部分のサイズを縮めてしまう可能性が示唆された
・青年期における人間の脳の発達は著しく、継続的ないじめを受けたものは脳の過剰発達を防ぐ機能が制御不能に陥っていることが考えられる
・このいじめの影響を確かなものとするためには、より長期的な研究が必要とされる

「いじめ」の本当の怖さは、心理的、あるいは肉体的な苦痛だけではないようです。

キングス・カレッジ・ロンドンなどによる新たな研究が、執拗ないじめがトラウマなどの心理的な障害を生むだけでなく、脳の発達において継続的なダメージを与えてしまう可能性があることを明らかにしています。

Peer victimization and its impact on adolescent brain development and psychopathology

https://www.nature.com/articles/s41380-018-0297-9

イギリス、アイルランド、フランス、ドイツの14-19歳の若者682人を対象にした調査では、そのうち36人が「継続的ないじめ」を受けていたことを報告しています。そして、研究者がそれらのティーン・エイジャーと、それよりも「軽いいじめ」を受けていた者の脳を比べてみたときに、そこに「違い」があることに気がつきました。

驚くことに、継続的ないじめを受けた者の脳の特定の部分が、実際に縮小していることが確認されたのです。その「縮小」がみられたのは、特に脳の中心部分に存在する「被殻」と「尾状核」です。その変化は、幼少期に虐待などの不遇を経験した大人の脳にみられる変化と似通ったものであることも分かっています。

青年期において、人間の脳は驚くべきペースで発達していきます。そしてその発達が過剰にならないために、脳にはその「膨張」を押し戻してサイズを縮める機能があります。しかし、この時期に継続的ないじめを受けた者は、このサイズを縮める機能が制御不能に陥ってしまっていることが考えられるのです。

当然ながら、青年期の脳の発達は後の人生に対して大きな影響を与えるものです。そして、激しいいじめによって縮んだ脳が「悪い影響」を受けることは、当然想定されるべきことでしょう。

この影響を確実なものとするためには、より長期的な研究が必要とされています。しかし、こうした研究結果を待たずとも、いじめ撲滅のための積極的な取り組みが必要です。そのような取り組みは、子どもたちの心だけでなく「脳」も守り、心理的な安全を確保するための非常に重要な社会的課題なのです。

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via: sciencealert / translated & text by なかしー

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