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画家モネは私たちの脳を操っていた!? 科学者が絵画にひそむ秘密を明らかに

2019.01.07 Monday

University of Rochester photo / J. Adam Fenster モネがウォータールー橋を描いたうちの1枚
Point
■研究者たちは、モネが光と色を操作して脳を「だます」ことを発見した
■彼らはモネの有名なウォータールー橋シリーズから多くの絵画を研究した
■モネは私たちが色を混同してしまうような筆の使い方をしていた

幻想的なタッチが特徴的な絵画の“印象派”の中でも、特に有名なクロード・モネ。大作『睡蓮』や『散歩、日傘さす女』など、代表作は枚挙にいとまがありません。そんなモネの作品の中でもさらに珍しいのが『ウォータールー橋』です。

でもこの絵画、目的は橋自体を描くことではなかったこと、皆さんはご存知だったでしょうか。

モネは「建造物」ではなく、刻々として変化していく、その刹那的な光と霧など「景色の雰囲気」を描写するために、この作品群を描き上げたのです。

今回、ロチェスター大学視覚科学センターでは、数あるウォータールー橋シリーズを比較、研究しました。その結果、モネが当時の科学者でさえ理解していなかったアプローチで、人の視覚に訴えかける色づかいを駆使していたことが分かったのです。

The University of Rochester’s Center for Visual Science http://www.rochester.edu/newscenter/the-science-of-seeing-art-color-354182/

University of Rochester photo / J. Adam Fenster

モネはロンドン滞在の間、実に40枚以上のウォータールー橋を書き上げています。渦巻く霧、柔らかな光、濃霧など、さまざまな周囲の風景と雰囲気の中で橋を表現したのです。

しかし、同大研究者らは、「それぞれの絵は非常に限られたカラーパレットを使っているが、それでもどういうわけか毎回全く違った雰囲気に見える」と述べています。

限られた色で多様な橋を描くためには

それはなぜなのでしょう?その答えは、私たちの目が光の波長をどのように取り込むかにあるようです。

私たちの目の網膜は、短波の光を拾う青、中波の光を鋭く吸収する緑、長波の光を鋭敏に吸収する赤を含む3種類の異なる錐体で構成されています。

Credit : University of Rochester photo-illustration / Michael Osadciw 橋のさまざまな見え方を再現したもの

モネは、隣同士に色の異なる筆を使っていて、それらを混ぜ合わせていないため、「同時コントラスト」と呼ばれる現象が起こります。これは同じ色が異なる色と並んで配置されているとき、色が異なって見えると同時にコントラストが生じることを指します。いわゆる「錯視」を、狙って描いていたのです。

彼はこの手法を使い、日の出、直射日光、夕暮れの外観をさまざまに描き分けています。たとえば、青みがかった色合いは直射日光のように見えますが、赤みを帯びたものは日が沈んでいるように見えます。

Credit : New York Times 色の配置や明るさなど、さまざまな要因で脳での見え方は変わる

また、モネは光、影、およびコントラストの要素を描くために、異なる色相(色の様相)と強度(明るさ、明度)も多用し、さらに人の脳に「錯覚」を起こさせていたことも分かりました。

同大教授のデュジェ・タディン氏は「私たちはそれが幻想であることを知っているかもしれませんが、私たちの脳は物事を自動的にグループ化する作業を行ってしまうので、同じ色でも異なるものに見えてしまうのです」と説明しています。

モネは脳科学者ではないので、脳のシステムが勝手に色を“誤認”してしまうというロジックは分からなかったに違いありません。ですが、たゆまぬ作画の修練によって、経験的に「私たちをダマす」手法を身につけていたのでしょう。今回はそれが、科学的に証明された形となったといえます。

そういえば2015年に、1人の花嫁が投稿したドレスの色をめぐってニュースになるほどの騒動が巻き起こりました。そのドレスは白と金か、それとも青と黒か。

『The New York Times』 The White and Gold (No, Blue and Black!) Dress That Melted the Internet

これも、人の脳というのは人間が思うほどロジカルではないという、良い例だったのではないでしょうか。

ダ・ヴィンチの天才的な絵の才能は「斜視」が一因だった?

reference: The University of Rochester / written & edited by Nazology staff

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