
■酸素が乏しい環境を生き抜くため、電気を生み出す細菌がいる
■細胞に微小電圧を加えることで、「電気を生む力」を元に細胞を種別に分ける技術が開発
■分極率が高い細菌ほど活発に電気を生む
地中の奥深く、湖の底、そして私たちの体内に住む細菌たち。酸素が乏しい環境を生き抜くため、せっせと働いて、電気を生み出す細菌がいることを知っていましたか?
電気を生む細菌は世の中に多く存在しますが、中にはその能力が突出しているものがいます。こうした「発電細菌」を電力源として活用する技術の研究が進められていますが、これらの細菌を実験室内で培養することは大変難しく、莫大な費用を要します。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、簡単な方法で電気を生む細菌を分類・特定する技術を開発。注目を集めています。
http://news.mit.edu/2019/identifying-electricity-producing-bacteria-0111
電気を生む力を元に細胞を分離
細菌は自らの細胞内で電子を生み、それらを細胞膜の小さな通路から放出する「細胞外電子伝達(extracellular electron transfer, EET)」を行います。細菌が電気を生む力を特定するため従来用いられてきた方法は、EETを司るタンパク質の活動を計測するというものでした。2種類の異なる細菌をそれらの電気特性に基づいて分離する「誘電泳動」によって、たとえばカエルと鳥の細胞を区別することが可能です。ですがこの方法は、失敗しやすく、時間が掛かるという難点がありました。
そこで研究チームは、さらに小さな違いである「電気を生む力」を元に、細胞を分離する技術を開発。それは、砂時計型のごく狭い通路に入れた菌株に微小電圧を加えることで、類似した細胞を種類別に分けるというまったく新しい方法です。
細菌を操作するのに必要な電圧に着目し、細胞の大きさを記録することで、研究チームはそれぞれの細菌の分極率 (原子や分子が電場よって平衡位置からずれる度合い)の算出に成功しました。その結果、分極率が高い細菌ほど活発に電気を生むことが判明しました。
研究チームは今後、未来の電力として活用できると考えられている有力候補の「発電細菌」について詳しく調査する予定です。
この新技術は、生物電気を含むクリーンエネルギーを利用したバイオ住宅などの進歩を加速させる可能性を秘めています。細菌たちが一生懸命に生み出した電気から、灯りや熱を得る時代が到来するのは、そう先のことではないかもしれませんね。



























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