■培養に使われていた細胞用のガスボンベが切れ、炭酸飲料の「ウィルキンソン」で乗り切るというツイートが話題に
■細胞全滅の危機を救った、齋藤准教授の機転と「ウィルキンソン」の実力を賞賛する声が多数寄せられる
ぼくらの炭酸飲料「ウィルキンソン」は救世主だったみたいです。
先月のある金曜日の夜、秋田県立大学の研究室内で、培養中だった細胞用の炭酸ガスが突然空になってしまうという事態が発生しました。新しいガスボンベは、週明けにならないと届かないというピンチ。
このまま放っておけば、培養中の細胞は全滅してしまいます。その危機に、研究室の齋藤敬(さいとうたかし)准教授は、炭酸飲料「ウィルキンソン」を代用する、という大胆な方法に打って出たのです。
齋藤氏は、大学内の売店にて、500mlの「ウィルキンソン」2本を購入し、インキュベータ内で開封して置きいれたとのこと。
研究室で培養中の細胞用の炭酸ガスが突然空っぽに!
でも金曜の夜なので新しいボンベは週明けでないと届かない!
全滅するぐらいなら、と大学の売店でウィルキンソンタンサン500mlを買い、インキュベータの中で開封、振って立てておきました。
月曜日…細胞は無事でした。ありがとうウィルキンソン! pic.twitter.com/6SvUXsQYiW— Takashi Kei SAITO (@Takashi_K_SAITO) March 24, 2019
そして、運命の月曜日…細胞はすべて無事に生き延びていたのです!
この天才的な機転に対し、Twitter上では、「これが化学者というものだ!…脱帽!」「身近にあるもので代用して乗り切るってまさに科学」といった賞賛の声が多数寄せられています。
万事休す!細胞全滅のピンチ
「炭酸ガス培養」という方法では、培養する細胞の環境(インキュベータ内)を「CO2濃度5%」に保っておく必要があるんだとか。これは動物細胞で多く用いられ、細胞を取り出した生体内の環境に近づけておく、という理由があります。
多くの細胞培養液は「pH」が色で分かるようになっており、炭酸ガスがあっても細胞の老廃物が多すぎると酸性を示す黄色に。炭酸ガスが保たれて、細胞も良い状況にあれば中性を示すオレンジ色になります。
しかし、炭酸ガスが不足すれば培養液はアルカリ性を示す紫色に…。これは「細胞の死」を意味します。
研究室で使用されていたインキュベータは古いもので、容積のデータが見つからなかったようです。そこで、寸法を外側から測り、容積を仮に計算して43Lとしました。すると、インキュベータ内を5%に保つには、CO2がおよそ2L必要になります。
そこで齋藤氏は、ネット上で「ウィルキンソンは4.0GV(溶存気体/液体体積比)」という情報を知り、「それなら500mlのウィルキンソン1本で2LのCO2が得られる」と判断したのです。
ちなみに、「4.0GV」とは、「液体の体積の4倍のガスが溶け込んでいる」ということなので、「500mlウィルキンソン」1本には、2000mlのCO2が溶けているというわけですね。