FAAH遺伝子の抑制と機能損失により「アナンタミド」が通常の2倍に
分析の結果、2つの遺伝子変異が発覚しました。1つ目は、体内でアナンダミドと呼ばれる物質を分解する役割を持つFAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)遺伝子の働きが抑制されていたことです。
アナンタミドは、快感などに関係する脳内麻薬物質の1つとして働きます。アナンタミドの分解が適切に行われなければ、痛みや不安を和らげる働きが過度になります。
2つ目は、DNA情報が欠けた、つまり機能がほとんど損なわれたFAAH遺伝子の存在です。専門家は、この偽遺伝子をFAAH-OUTと名付けました。FAAH遺伝子の抑制は多くの無痛症患者に見られる特性ですが、FAAH遺伝子自体の機能が失われているケースは、キャメロンさんが初めてでした。

これら2つの特性が独自に組み合わさった結果、キャメロンさんの体内では通常の人の2倍以上のアナンタミドが生産されていました。その結果、痛みや不安が減少する一方で、幸福感や忘れっぽさが増し、なんと傷の治りまでもが早くなっていたのです。