ただし、対象が物の場合は大丈夫
さらに研究チームは、もし動画に写っていたのが人の手ではなくてボール、つまり意思を持たない物体だとしたらどうかについても調べた。当然、ボールは障害物を避けようなんてしない。人の手をボールに置き換えた同じような動画を別の被験者グループに行ったところ、最初の実験で観察されたような誤判断は見られなかった。
今回観察された誤った判断は決して程度の大きいものではなかったが、それでも日常生活に十分な影響を与えるほどのインパクトを持っている。他者が何か紛らわしい行動をとるのを目にした時、私たちはそれが小さな変化であったとしても、その行動を違って解釈したり、その背景にある本当の意図を見逃してしまう可能性だってあるのだ。
また、この研究は、自閉症患者が他者の行動の裏にある意図を読むことを困難だと感じたり、統合失調症患者がそこに存在しない意味や意図を見たりする傾向を持つ理由について、重要なヒントを与えてくれる。
人のこうした直感は、社会の中で生きるために役に立つ一方で、時に正しい判断を邪魔することもある諸刃の剣なのかもしれない。