偶然にも同じ道をたどる
しかし彼らの物語はこれで終わりではなかった。
沈没後の氷河期によって海面が下がり始め、アルダブラ環礁が再び海上に姿を現したのだ。するとマダガスカルで生き残っていたノドジロクイナの群れが、またアルダブラ環礁にやってきた。これが前回の絶滅から数万年後、今からおよそ10万年前のことだ。
こうして住み着いたのは前回絶滅した鳥とはまた別のノドジロクイナのはずだが、ここで不思議なことが起きる。蘇ったクイナの化石を調べてみると、絶滅前に生きていたクイナの骨とは明らかに異なる飛翔能力の退化プロセスが散見されたそうだ。
つまり新しくやってきたクイナが、「天敵がいない」という同じ理由でまた1から飛ぶ力を失くしてしまったことがわかったのである。
ポーツマス大学の古生物学者デヴィッド・マーティル氏によると、こうした現象は「反復性進化」と呼ばれ、同じ系統に属する生物が異なる時間と場所で同じように誕生することを意味する。
ところが、今回のクイナほど長い時間を隔てなお、偶然の一致が見られる例は今までに無いそうだ。
現在、インド洋の海面は地球温暖化の影響により再び上昇傾向にあり、もしかするとアルダブラ環礁が海の底に再び沈んでしまう恐れもある。クイナもそれによって過去と同じ運命をたどるかもしれないが、彼らならきっと三たび蘇ってくれるだろう。