草原で二足歩行が有利に働いた
こうした新たな環境に最も適していたのが「直立二足歩行だ」とメロット教授は指摘する。
高い樹木や鬱蒼とした森が大幅に消失したことで、見晴らしが格段に良くなった。さらに二足歩行は四足のナックルウォークに比べて消費量が4分の1に減り、長距離移動が可能となる。
つまり残された木から木へと渡り歩き、そこを拠点にして天敵を監視することができたのだ。
ただ直立二足歩行の起源は、およそ600万年前に存在したサヘランテロプスにまで遡るといわれている。サヘランテロプスはヒトとチンパンジーの特徴が混交していたが、残された骨盤の状態から二足歩行が可能だったことが分かっている。
しかしメロット教授によると、この時点ではまだ二足歩行が主な移動手段ではなく、必要時にだけ使う程度だったそうだ。鬱蒼とした森の中ではまだバランス力に長けた四足歩行が有利だったのだろう。
そして約260万年前の草原化がきっかけとなって、二足歩行へと正式に移って行ったと考えられる。しかも人類の祖先に二足歩行へ移る土台が整っていたことを考慮すると、今回の新説により真実味が増してくる。