Point
■オックスフォード大学内に、1813年から毎日、手作業で気象観測を行なっている観測所がある
■起源は同大学内で250年前に設立されたラドクリフ天文台に始まる
■長期的な観測のおかげで、200年以上にわたる地球の気候変化に関する貴重なデータが得られている
愛されて200年。
英・オックスフォード大学内にある観測所では、1813年から1日たりとも欠かすことなく気象観測が行われている。
しかも自動化が進む世の中に反して、日射量・降雨量・温度測定まですべて手作業で観測しているというのだ。
現在、観測を引き受けているのはオックスフォード大学博士課程に在籍するエマ・ハワードさん。エマさんは雨の日も風の日も、毎朝9時きっかりに観測作業を行うという。もしエマさんが出れない日は必ず代わりの誰か引き受けている。
「伝統ある観測に関われるのはとても光栄ですが、何か間違いをして台無しにしてしまわないかいつも不安です」とはエマさんの言葉だ。
歴史ある観測はどういった経緯で始まったのだろうか。
起源は250年前に遡る
この観測はオックスフォード大学が1930年代まで運営していたラドクリフ天文台の施設で行われている。ラドクリフ天文台は同大学の中心部に位置する大学院グリーン・テンプルトン・カレッジの敷地内にある。
設立は、同大学の天文学者だったトマス・ホーンズビー(1733-1810)がきっかけとなっている。ホーンズビーは同大学で教授職に就いていた1767年に、ラドクリフの公益信託団体に大規模の天体観測所を作るよう嘆願書を出したのだ。
彼は天国という存在に興味があり、夜空の星を正確に観測するためには大気の乱れを考慮し、天候を観察できる設備が必要だった。彼が1776年に観測した記録が今も残されている。
こうしてラドクリフ天文台は1773年にめでたく設立され、現在でも続く手作業での観測自体は1813年11月14日から始まったそうだ。
その後、オックスフォードの天候条件が観測に適していないといった理由で、1970年代に南アフリカ天文台に統合される。ただ建物自体はそのまま残されて現在に至っている。