国家間の紛争を起こす危険性も
ところがこのジオエンジニアリングを世界各国が他国に無断で行うと国際的な紛争に発展しかねないという。
カナダ・ウォータールー大学のジュアン・モレノ・クルツ氏は「太陽光ブロッキングという手法は、意図せずして他の地域に地政学的な被害をもたらす」と指摘する。
地政学とは、地理・気候的な環境がその国の政治や経済、軍事的な側面に与える影響について研究する学問のことだ。
例えば、エアロゾルを南半球に散布すると、それが海上の温度や風速に影響を与えて北半球により多くのハリケーンを生じさせる可能性がある。
さらに世界気象機関(WMO)の科学者アンドレア・フロスマン氏は「大気には壁がないので、エアロゾルによる雲が気流に乗って目標としない地域に移動することもありえる」と話す。
その結果望んでもいないのに太陽光が遮られ、植物が育たなくなり、食糧生産が困難になる地域が出てもおかしくはないのだ。そのことで食料をかけた国内紛争からその原因を作った国との戦争が勃発する。
さらにこうした現象が地球規模で起こったとすれば、行き着く先は3度目の悲劇でしかない。
ジオエンジニアリングが本当に地球温暖化に対する一番の解決法かは、まだ議論の余地がある。「国家間の戦争を引き起こすというのはあまりに大げさだ」とする向きもあるが、いずれにせよジオエンジニアリングには国際的な取り決めや厳密なルールが施行が必要だ。
地球温暖化が世界戦争の引き金まで引いてしまうことがないよう、努めなければならない。