Point
■フィンランドの企業が、水と空気と電気から粉末の食用タンパク質を生産する技術を開発した
■微生物を利用したこの技術は、食糧生産における環境への影響が非常に軽微で、食糧問題・環境問題の解決に貢献する可能性がある
■宇宙食への利用も検討されており、3Dプリンターと組み合わせることでSF作品のレプリケーターのような食料合成装置も実現できるかもしれない
現在世界の二酸化炭素排出量の約4分の1は食糧生産によるものといわれている。
さらに国連の試算によると、世界の食料需要の増加に伴って今世紀の半ばまでに50〜70%の食糧増産が必要だ。
今後人類がいかに食料を確保していくかは、世界の重要課題の1つなのだ。
こうした食料問題に対して、「お菓子が無いなら昆虫を食べればいいじゃない」的な発言をする研究者もいるが、正直きつい。
そんな中、この食糧問題に光を当てる新技術の開発に成功した企業がフィンランドに現れた。
それは微生物を使って、水と空気と電気だけで小麦粉のような食用タンパク質を生産する技術だという。なんとエコロジー。これにはヴィーガンもにっこりだ。
この技術開発は、フィンランド国立技術研究センター(VTT)とラッペーンランタ大学の研究支援を受けたソーラー・フーズ(Solar Foods)から発表されている。
https://solarfoods.fi/
水と電気と二酸化炭素 あと微生物
開発された新しい食品は「ソレイン」と呼ばれている。
これは50%のタンパク質と10%程度の脂肪、25%程度の炭水化物を含有していて、見た目は小麦粉に似ており、きちんと味もするという。
製造方法はビールの醸造に似ている。土壌由来の微生物を含んだ液体に、水素と二酸化炭素の泡を供給し、カリウム、ナトリウム、リンなどのミネラル分を加えることで、微生物にタンパク質を生産させるのだ。
水素は水を電気分解して作り出すため、電力はここに利用されている。
この生成物を熱処理して乾燥させることで、天然のタンパク質粉末を得ることができるのだという。
これは1キログラムおよそ5ユーロ(約612円)で生産できるらしい。しかも気候条件に制限されることもなく、耕地や灌漑も当然ながら必要ない。砂漠や極地でも食糧を作ることが可能になる技術なのだ。
非常にエコで、同時に経済的で、食糧難の国々にも利益がある。なんだかいい事づくしのようだ。