遺伝子変化の抑制を「オフ」にする
それではステミンはどのようにして葉細胞を幹細胞へと変えているのか。
葉細胞というのは一般的に、葉っぱの形状を保つため、幹細胞化を引き起こすような遺伝子グループの働きが完全に抑制されている状態にある。
茎や根っこに分化した細胞がそれぞれの機能を維持できるのは、幹細胞化する遺伝子を抑えつけ、茎や根に特有の遺伝子だけを働かせているからだ。
ところが実験では、ステミン遺伝子を働かせると、この抑制がオフ化され一挙に幹細胞化が起こり始めたのである。これは活性化したステミンが特定のDNA配列に結合することで、細胞の化学修飾が外れることによる。

特定の位置で化学修飾が起こると細胞が分化・専門化される代わりに、余分な遺伝子が働かないように抑圧される。つまり化学修飾が外れると、抑えつけられていた遺伝子が働き始めて幹細胞へと変化するのである。
こうしたステミン遺伝子はコケ植物以外にも、イネやバラのような植物にも存在していることが分かっている。
それらのステミンがそのような働きをするかはまだ不明だが、コケ植物のように無傷の状態で増やすことも可能になるかもしれない。